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学習指導要領の「はどめ規定」を知る/「学童期・思春期メッセージ」第20回編集会議開催報告

2025年4月24日

コンテンツチームの荻原です。

きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。2025年3月28日現在、6万373人の読者の方とつながり続けています。

より長くつながり続けるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。
第20回の4月8日は、5名の医師と、5名のきずなメールスタッフが参加しました。

この学童期思春期メッセージは、段階を踏んで育てていく原稿です。
現在、第2段階のアップデートが終了しています。
どのような内容が追加されたかは、第13回編集会議開催報告をご参照ください。

今回は、前回に引き続き子どものインターネット環境に関する原稿のほか、性の多様性についての原稿も検討を進めました。

 

【コンテンツ担当の思索録】学習指導要領の「はどめ規定」を知る

今回の編集会議の中で、性行為や性感染症に関する内容の配信時期が話題に上りました。
現在は、高校2年生の夏休み前の原稿に以下の内容が入っております。

「恋愛は素敵な面がたくさんありますが、知識がないままでの性行為は妊娠や性感染症、加害行為につながることも」

性行為に触れる内容はこの一本のみです。

このメッセージは自治体という公的な場からの配信を行っているため、「公的な立場として安心して届けられるかどうか」を配慮し、「学習指導要領の内容に合わせた」タイミングとなっていました。

これに対して、監修の医師たちより、

・もっと早いタイミングでこの話題について触れておくべきではないか
・保護者へのメッセージなので、教科書だけに従うこともないのでは
・HPVワクチンが小学6年生から定期接種であることも、検討材料になるのではないか

と意見をいただきました。

その検討に入る準備として、実際に学習指導要領がどのようになっているのか、改めて確認をしてみました。

 

「中学校学習指導要領(平成29年告示)保健体育編」の記述

中学校の学習指導要領では、

“妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする”

と書かれています。妊娠の経過、つまり性行為については扱わない、となっているようです。

【保健体育編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説

「はどめ規定」による制限

はどめ規定とは、ある内容を扱うときに、扱い方を制限する文言の通称です。

はどめ規定を言葉で定義している資料では、古いものからの参照ですが以下が見つかりました。

”学習指導要領の「内容の取扱い」において、当該内容を扱うことを前提にした上で、その扱い方を制限する規定が一般に「はどめ規定」と呼ばれている。”

つまり、今回で言えば「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という部分が「はどめ規定」にあたります。

いわゆる「はどめ規定」等について

厳密には「扱ってはいけない」というわけではない

新学習指導要領の総則で以下のようなことがわかりました。
・必要がある場合は、学習指導要領を越えた内容を指導することもできる。
・これはあくまで全ての生徒に対して一斉に教えることを示したもの。
・目標や趣旨から逸脱せず、生徒の負担になりすぎない範囲で可能

【総則編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説

教科書にも「発展的学習内容」を掲載することはできる

「教科用図書検定規則」にも、いくつかの条件を満たせば、学習指導要領以上のことが掲載できることが定められているのを見つけました。
「学習指導要領を越えた内容」のことを、「発展的学習内容」という言葉で定義していることもわかりました。
義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成29年8月10日文部科学省告示第105号)

性についての「はどめ規定」は削除されなかった

また、興味深かったのが、平成29年の新学習指導要領改訂では、「『はどめ規定』は原則削除された」ということ。

その中でも、性についての「はどめ規定」は削除されなかったということになります。
これについて質問し、どのような答弁が交わされたかわかる新聞記事がありましたので共有します。
性教育のはどめ規定「撤廃せず」 永岡文科相が国会で答弁

学習指導要領について、以上のことがわかりました。
これらの内容をふまえて、まずは自治体に提案してみることを目指して、「妥当な配信タイミング」を探っていきたいと思います(了)。

 

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