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学童期思春期の「性」を、どんな言葉で伝えるか/「学童期・思春期メッセージ」第9回編集会議開催報告

2024年5月27日

コンテンツチームの荻原です。

きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。2024年4月26日現在、5万6813人の読者の方とつながり続けています。

より長くつながりつづけるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。

第9回の5月14日は6名の医師と、4名のきずなメールスタッフが出席しました。

この学童期思春期メッセージは、段階を踏んで育てていく原稿です。
6~18歳のお子さんや保護者の方に向けたメッセージは、団体としても初の試み。
具体的には、3段階にわたってバージョンアップしていく計画となっています。
今は第2段階の準備について、検討を進めております。

前回の会議でいただいたご意見を反映し、どの年齢でどんなことをより盛り込んでいくことができるのか、さらに具体的な議論を進めました。

「事故予防」や「性の多様性」などの観点から今回もたくさんの気づきをいただきました。

 

 

【コンテンツ担当の思索録】学童期思春期の「性」を、どんな言葉で伝えるか

原稿制作のために、性の多様性について少し勉強をしました。その中で、改めてこの問題を網羅的にとらえていく難しさを感じました。

扱うのが難しい性の多様性の問題。これを、どのように私たちがつくる学童期・思春期メッセージに生かしていくことができるのか。
どんなに難しくても、親御さんは思春期を迎えてゆくお子さんの性と向き合っていかねばなりません。
自身の性に違和感を感じるお子さんも、違和感を感じている子が周りにいるお子さんも、違和感は感じていないお子さんも、皆が自然と受け入れあえる環境に、少しでも近づいてゆくために、テキストメッセージができうることはどんなことか、考え続けていきます。

今回勉強したことと、先生方との対話を通して感じたことを簡単にまとめます。

 

■性の多様性について言うときに、ほかのものにも汎用できる抽象度で盛り込む

性の多様性の問題は、それだけを大きく取り出して独立させ、原稿に取り込むというのはちょっと違うのではないか。私はそのように思いました。
性に限らず、発達の程度や、生まれ育った国や、家庭の環境や経済状況など、「ちがい」によって生じる問題は様々にあります。そういった、様々な問題の中のひとつとして、性のことも扱う。性以外の、「ちがい」のせいで生じる他の問題においても重ね合わせることができる言い方をしていくのがいいのではないか。大切なことを大きく捉えて、原稿を制作することが適切だと感じました。

例えば、「他の人とのちがいを尊重する」というのは、汎用性が高い視点だと考えます。
その視点もさらに細分化することができます。

①お子さんと親御さんがかかわるときに、お子さんを尊重する、という視点。
②あるいは、お子さんが周囲の人とかかわるときに、周囲の人を尊重できるように、という視点。

などです。

例えば①なら、「普段から相談しやすい環境をつくる」。
②なら「違いを認め合う言動を増やす」というようなことがいえるかもしれません。

また、ひとりの人の中には、様々な性質が混在している、ということも言えそうです。
男性の中にも女性的な部分があり、女性の中にも男性的な部分がある。どちらかひとつを選びとっているわけではなく、グラデーションの中にすべての人が存在する、ということです。

日本人の中にもフランス人性があるかもしれないし、大人の中にも子ども性がある、というように。

 

■言葉の使い方に意識を向ける

「異性などほかの人への関心」という表現を初めて使った教科書が、2025年度に使われる教科書検定の審査を通った、という新聞記事を見かけました。中学校の保健の教科書です。これまでは「異性への関心」などの表現だったようで、学習指導要領上はまだ「異性への関心」となっているとのことです。

では、私たちのメッセージではどんな言葉を使っていくのか?
そういう言葉選びを、丁寧に行うことが大切といえます。
3歳までのきずなメールでも、「ママ」の表記が「ママパパ」に変わってゆくなど、言葉は年々変化しています。今はそこからさらに、過渡期を迎えていると感じます。

その一方で、思春期のお子さんは大きな体を変化を迎える時期で、なおかつその変化が、集団生活での悩みや、難儀さに直結することも多くあるといえます。お子さんの体の変化について、原稿ではぜひ取り上げたいところ。しかし胸のふくらみや声変わりなど、第二次性徴は、生物学的な性と切り離して扱うのが難しい問題です。

生物学的な性を否定するわけにはいかないことと、それでも性は自由であることとを、どのように伝えていくか、ここにも課題があると感じています。

 

「学童期・思春期メッセージ」の大きな試みのひとつは、個別化がどんどん進んでいく6歳~18歳のお子さんと、そんなお子さんたちと生活をともにする多種多様の親御さんすべてに、ひとつのメッセージを送る、ということだと思います。

だから、様々な「ちがい」をどう乗り越えてどう言葉を組み合わせていくのかを考えることは、このメッセージの最も大切なことに触れる問題でもあるのです。

私たちはここまで、そのことについてできる限り唸って来ましたが、フェーズ2原稿の完成に向けて、さらに一歩ずつ、唸りながら言葉を進めていきたいと思います。(了)

 

 

過去ログ

年齢に応じた「生命の安全教育」/「学童期・思春期メッセージ」第8回編集会議開催報告
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「希望の型」を原稿にも盛り込めないだろうか「拡充原稿」第4回編集会議開催報告
「拡充原稿」第3回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録
「拡充原稿」第2回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録

 

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