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「この年代は悩みがちでネガティブだ」という先入観/「学童期・思春期メッセージ」第12回編集会議開催報告

2024年8月29日

コンテンツチームの荻原です。

きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。2024年7月28日現在、5万7578人の読者の方とつながり続けています。

より長くつながりつづけるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。

第12回の8月20日は運用報告会も兼ねており、4名の医師と、多くのきずなメールスタッフが参加しました。

 

この学童期思春期メッセージは、段階を踏んで育てていく原稿です。
6~18歳のお子さんや保護者の方に向けたメッセージは、団体としても初の試み。
具体的には、3段階にわたってバージョンアップしていく計画となっています。
今は第2段階の準備について、検討を進めております。

いよいよ原稿制作も佳境で、
今回はいよいよ大詰め。実際の原稿を目の前に、言葉の細かいところを調整していきました。

病院は、何か調子の悪いところがあっていくものですから、監修の医師たちはネガティブな状況に陥っているお子さんたちを数多く目にしているはず…そんな医師たちから、子どもを信頼し、ポジティブな声掛けをしていくことを教えていただき、とても勉強になりました。

 

【コンテンツ担当の思索録】「この年代は悩みがちでネガティブだ」という先入観

今日は、上記にも挙げた、作成中の原稿をやりとりする中で勉強になったことを紹介したいと思います。
中学校2年生、冬休み明けのお子さんの保護者に向けた原稿の、検討模様をお伝えします。

中学2年生の冬休み明け原稿は、あまり明るくない内容からスタートしました。
冬休みにあたる12月後半~1月頭は、クリスマスや大掃除、お正月とイベントが多い時期。さらに、進路のことが視野に入ってきたり、勉強へのプレッシャーで負荷がかかっていたりと、ナーバスな時を過ごすお子さんも一定数いるのではないか。また統計資料でみると、不登校や自殺者のますます増加してくる時期でもあり、思春期まっただなかで、親との関係がぎくしゃくしている家庭も多い時期…と私たちは考えました。加えて、長期休み明けは不安定になりがちです。

あまり明るい内容を書くと、保護者の心情と乖離するのではないか、という思いがあったので、「うまくいっていないことも多いでしょう」のような視点で原稿を書くことにしました。

また、自殺予防の観点から、自殺直前のサインと言われる行動や様子の資料を参照して(文部科学省:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/1259186.htm)、「いつもと違う態度が見られるときは声をかけるようにしましょう」などの内容も入れて作成を行いました。

 

編集会議の場では、そうやって作成した原稿を監修の医師に見てもらい、ご意見いただきました。

医師からの意見を一部要約して紹介します。

・「新学期の準備はできましたか?」「笑顔で」など、前向きな内容がいいのでは

・わが子を疑ってみてしまうような内容ではなく、信じる、という前提をもった内容はどうか

・挙げられている態度は、反抗期の子どもにはありがちな態度。いつもの反抗期とは違う態度、などはどうか

 

ポジティブに書いていい、という言葉が、私にとっては少し意外でした。
会議の中ではすぐに理解することが難しかったのですが、あとで振り返って考えてみました。

もしお子さんがネガティブになっていたとして、このメッセージを読む親は「ネガティブな人のそばで、それを見守りつつ、寄り添う人」で、そんな人に寄り添うことを目指すこのメッセージは、ポジティブさの方に少し振れてもいいのかもしれないと思えました。
ひとつひとつの家庭の事情は知ることができない、でも弱いきずなでつながり続けていて、いざという時には相談先、連絡先になる、そんな距離感だからこそ。家庭の雰囲気がどのようなものであろうと、どこにいても同じように漂う、いわば空気のような。

そんな空気ならば、ちょっと明るい方がいいのではないかと。

そしてもう一つ、もしかすると、親は「この年代は悩みがちでネガティブだ」などの先入観を持ってわが子を見すぎないようにする方がいいのかもしれない、という気づきがありました。

この年代の特徴や、問題になりやすいことを伝えることは必要だし、それはこのメッセージがになっている大切な役割のひとつです。
その一方で、中学生一般に偏りすぎず、「目の前にいる、ほかの誰でもないお子さん」に目を転じられるような原稿…それは一見すると矛盾した方向性を持つ内容にも思えますが、不可能ではないことだとも思えました。

例えば、医師からの意見にあった、「自殺のサインと言われるものは、この年代であればありがちな態度も含まれている」という指摘にも、「中学生一般ではなくわが子を見る」の視点が入っていると言えます。
大切なのは、目の前にいるお子さんの日常的な反抗的態度と比べて、違和感があるかどうか。
いくら指標のリストを参照しても、お子さんをみている身近な人でなければ、「いつもの反抗的態度」がどのくらいで、「そのいつもと違う」のかどうかは、気づけないのです。

だからこその、「いつもの反抗期とは違う態度」なのです。

一般的な指標を示しつつも、それが「わが子の場合はどうなのか」に少し息をついて置き換えられる原稿に、なりつつあると思えました。

 

この原稿はまだ検討中です。
「間接的な距離感だからこそ」と、「大きな視点と小さな視点」…これらを意識して、原稿の仕上げを行っていきたいと思っています。
(了)

 

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