年齢に応じた「生命の安全教育」/「学童期・思春期メッセージ」第8回編集会議開催報告
コンテンツチームの荻原です。
きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。2024年3月26日現在、5万6469人の読者の方とつながり続けています。
より長くつながりつづけるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。
第8回の4月9日は6名の医師と、4名のきずなメールスタッフが出席しました。
この学童期思春期メッセージは、段階を踏んで育てていく原稿です。
6~18歳のお子さんや保護者の方に向けたメッセージは、団体としても初の試み。
具体的には、3段階にわたってバージョンアップしていく計画となっています。
今は第2段階の準備について、検討を進めております。
今回の会議では、ブラッシュアップできる項目について、どの年齢でどんなことをより盛り込んでいくことができるのか、具体的な議論が始まりました。
団体から提出した一覧をその場でざっと確認いただいただけでも、「この分野が欠けている」「この内容はあと一年早い方がいいのではないか」など、多くのアドバイスをいただきました。
医師たちの持つ認識や視点について、改めて敬意を感じ、また一緒に原稿を作っていけることの喜びと頼もしさを感じました。
【コンテンツ担当の思索録】年齢に応じた「生命の安全教育」
「生命の安全教育」とは、
“生命の尊さを学び、性暴力の根底にある誤った認識や行動、また、性暴力が及ぼす影響などを正しく理解した上で、生命を大切にする考えや、自分や相手、一人一人を尊重する態度等を発達段階に応じて身に付けることを目指すもの”
(文部科学省HPより引用)
として、文部科学省が提唱しているものです。
文部科学省は、学校教育の中でこの内容を指導するための教材や手引きを作成し、公開しています。学童期思春期メッセージ作成の参考資料として私もその教材を見てみました。
内容はもちろんのこと、「発達段階に応じた伝え方」の工夫に、ヒントをたくさんもらいました。同じトピックを、発達に応じて別の言い方で伝えている例をあげて、紹介してみたいと思います。
例示するトピックは、「プライベートゾーンを、侵害されたと感じたときの対処法」です。
以下に、幼児期~高校生に分けて、どのような言葉でこのトピックを伝えているかの違いを、特徴のある点だけに絞って列挙していきます。
*幼児期:じぶんだけのたいせつなところをさわられていやなきもちになったら、「いやだ!」といおう。にげよう。あんしんできるおとなにおはなししよう。もしさわられても、けっしてあなたはわるくない。
*小学校低学年、中学年:上記の内容に加えて、「お友達がむりやりさわられそうになっていたり、いやだと断れなさそうだったりした時」の対応が加わる。
*小学校高学年:人との距離感には、「体のきょり感」と「心のきょり感」のふたつがある、という視点に変化。親しい間柄でも、近すぎていやだと思ったときはすぐに離れていい。自分と友達と気持ちはいつも一緒ではない。どんな気持ちをもってどんな考え方をするかはを自分で決めていい。そして相手に断られたときに相手の気持ちを理解することも大切、など。SNSのことも入ってくる。
*中学校:上記の内容に加え、よりよい人間関係とは?自分にとっての心地よい距離感を考えてみよう。家族、友達、知らない人だったら?という言い方。また、性暴力という具体的な侵害についても扱われている。
*高校生:上記の内容に加え、セクシャルハラスメント、二次被害(周囲の理解のない言動で被害者がさらに傷つけられること)についても扱われている。また、性暴力の被害についての統計結果などを提示している。
以上は、それぞれの年代で何を言っているか、よりもそれぞれの年代間の違いに着目し、筆者の主観でまとめたものです。
幼児期には「とにかく自分を守ること」から始まり、小学校低学年、中学年になると「お友達のことも守る」に広がります。
それから小学校高学年には、「プライベートゾーンといっても、体のことと心のことがあるんだよ」という伝え方に変化。また、大人からの侵害に加えて、友人間の侵害も対象となっていくところもポイントです。
中学校になると、少し抽象的な思考が入ってきます。「自分にとって心地よい距離とはなんだろう?」「よりよい人間関係とはなんだろう?」という視点で問いかけています。
高校生になるとさらに抽象度が高くなり、性暴力についての統計結果なども提示されていました。「自分と、自分の周りにとってのよりよい人間関係」という視点から、「よりよい社会とは」までが射程に入ってくるということだと感じました。
もうひとつ高校生では、小学校高学年から加えられた「友人間の侵害」がさらに発展し、「二次被害」についても取りいれられています。被害者にならないことから、加害者にならないこと、互いを尊重すること、また何かあったときには、信頼できる大人に頼ることはもちろん、友人にとってのよい相談者であることなどに発展していくのです。
ここまで原稿を作ってきた過程で、自分なりに子どもの発達の様子を児童心理に関する本などを読んで少しずつ学んできましたが、それを具体的なメッセージの言葉として落とし込んでいくことは、知識として学ぶこととは別の難しさがありました。
今回紹介した文部科学省の教材の例示は、その実践のひとつとして大いに参考になるものでした。
この資料は学校教育を想定した資料ですが、私たちの目指している原稿は、保護者の方へ向けたメッセージです。
そこにはまた別の変換が必要になると思います。
ひとつずつ、着実に取り組んでいきたいと感じています。(了)
過去ログ
「マルハラ」ってご存知ですか?/「学童期・思春期メッセージ」第7回編集会議開催報告
災害という非常時に、平時からの「そなえ」としてのきずなメール/「学童期・思春期メッセージ」第6回編集会議開催報告
「こども大綱」ときずなメール事業/「拡充原稿」第5回編集会議開催報告
「希望の型」を原稿にも盛り込めないだろうか/「拡充原稿」第4回編集会議開催報告
「拡充原稿」第3回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録
「拡充原稿」第2回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録