「拡充原稿」第4回編集会議開催報告/「希望の型」を原稿にも盛り込めないだろうか(コンテンツ担当の思索録)
きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。11月28日現在、5万3685人の読者の方とつながり続けています。
より長くつながりつづけるために現在、18歳までの「拡充原稿」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。
第4回の12月19日は5名の医師と、5名のきずなメールスタッフが出席しました。
今回は、年度が変わるタイミングで改訂・追加する原稿についての協議や、拡充原稿を他の自治体でも展開することについての協議などを行いました。
「拡充原稿」とは7歳~18歳の原稿を指し、小学一年生以降にあたります。未就学児から小学校にあがる年代の、成長段階の移り変わりや、それが行政の上でどのように反映されているのか、現在の仕組みで起きてしまう情報の分断などについても、医師たちの知見をさまざま聞くことができ、今回も学びの多い会議となりました。
次回以降も、引き続きよりよい原稿づくりにつながるよう、協議を進めていきたいと思います。
【コンテンツ担当の思索録】
コンテンツ担当の荻原です。
■「子ども虐待防止学会第29回滋賀大会」
11月25日、26日に「子ども虐待防止学会第29回滋賀大会」に参加してきました。
その中で、拡充原稿(7~18歳)の年代へ向けた原稿づくりの参考になる内容も、数多くありました。その中からひとつ、紹介してみたいと思います。
25日の「妊娠期からの子育て支援~切れ目のない母子支援を実証的に考えてみる~」というシンポジウムで、東京医科歯科大学国際健康推進医学分野の山岡祐衣氏の発表で知ったことから、一部分をお伝えします。
■「ACE」について
生育環境が人をかたちづくる、という立場にはいくつかの段階があり、その中に「ACE(Adverse Childhood Experiences)」という考えがあります。
これは逆境的小児体験のこと。性的虐待や面前DVなどの、トラウマ的体験をさします。
ACEが多くある場合、成人後の心身によくない影響があると言われています。
今回は、「虐待の世代間連鎖」という文脈で、ACEの影響が語られていました。(自身の幼少時にACEを多く持つ人が親になったときに、自分の子どもに対してもそういったふるまいをしてしまう可能性が、ACEのない人と比べると高い)
■「PCE」について
ここまでは、私も聞いたことのある話でしたが、「ACE」と対になる体験として、
「PCE(Positive Childhood Experiences)」という考え方があることを知りました。
これは、幼少期のポジティブな体験のこと。ACEと同じように指標化されていて、以下の項目でスコアをはかっているようです。
(1)家族に自由にあなたの気持ちを話せると感じますか
(2)あなたの家族は、あなたが困難な時にそばにいてくれると感じますか
(3)地域の伝統的な行事を楽しみましたか?
(4)高校生の時に、自分がその高校の一員であると感じましたか?
(5)友達によって支えられていると感じましたか?
(6)両親以外に少なくとも二人の大人があなたのことを本当に関心を持ってくれていましたか?
(7)家にいるときは大人によって守られて安全だと感じましたか?
■「PCE」が「ACE」を補う
発表では、「ACEがあっても、PCEが多ければ、リスクは減らせる」とされていました。
さらに「ACE」、「PCE」の他に「子どものレジリエンス」を足した3つの要素で、健全に生きていけるか、虐待する親にならないか、を検証する方法があるとも。
(「レジリエンス」とはストレスを受け心が折れそうになった時に、「元に戻せる回復力」)
■まとめ
これは、私の中では大きな発見でした。
マイナス部分を埋めることができなくても、他の経験がその代わりになって「自分をよくすることができる」というのは、大きな希望ではないでしょうか。
この「希望の型」を、どのようにかして原稿にも盛り込めないだろうかと、考えながら帰路についた秋の日でした。(了)
過去のログ
「拡充原稿」第2回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録
「拡充原稿」第3回編集会議開催報告/コンテンツチームの思索録