日本におけるプレコンセプションケアとは/「学童期・思春期メッセージ」第24回編集会議開催報告
コンテンツグループの荻原です。
きずなメールは「テキストでつながり続けるセーフティネット」です。2025年7月24日現在、6万2191人の読者の方とつながり続けています。
より長くつながり続けるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。
第24回の8月5日は、6名の医師と、5名のきずなメールスタッフが参加しました。
フェーズⅢ原稿が完成間近を迎えております。
ここまで進めてきた内容について、改めて全体を俯瞰し、確認と検討を進めました。
事故予防原稿への見直しや、医療監修原稿のことが話題にあがりました。
この学童期思春期メッセージは、段階を踏んで育てていく原稿です。
現在、第2段階のアップデートが終了しています。
どのような内容が追加されたかは、第13回編集会議開催報告をご参照ください。
【コンテンツ担当の思索録】日本におけるプレコンセプションケアとは
先日、学童期思春期メッセージの監修医の紹介で、日本におけるプレコンセプションケアがどのように始まっていったのか聞くことができる講座がありました。
学童期思春期メッセージともかかわる部分がたくさんありましたので、共有いたします。
こども家庭庁が発表している「プレコンセプションケア推進5か年計画」によれば、
「周産期死亡率(妊娠22週以降~生後1週間未満の間に亡くなってしまった赤ちゃんの割合)」や、
「母体死亡率(妊娠に関連したことが原因で亡くなってしまった女性の割合)」
の増加とプレコンセプションケアが関連していることがわかってきたのは1980年代とのこと。
それから徐々に、周産期死亡率や母体死亡率は世界全体としてみれば減少傾向にあるようですが、日本では少し違った背景の中、「プレコンセプション」が要請されたようです。
日本の周産期死亡率、母体死亡率は、世界と比べてみると低い水準です。
一方で、低体重児や早産の割合は、増加傾向にあります。
また、出生体重の減少、最終身長(伸びが止まった最終的な身長)も低くなっている一面も。
こうした日本の特徴もふまえて、「日本版のプレコンセプション」がつくられてきたことがわかりました。
ほかにも、若い世代の「やせ」や、葉酸不足など、さまざまな要因と結果が複雑に絡み合って「日本での必要性」につながっているのですが、中でも印象に残ったことは、
・ヘルスリテラシーの低さ
・包括的性教育の遅れ
です。
この両者の関係性もひとくくりには言えないと思いますが、講座の中では「包括的性教育の遅れが、ヘルスリテラシーの低下につながっているのでは」という視点でも語られていました。
教育分野ではなかなか推し進めていくことの難しい「包括的性教育」を、日本においては「プレコンセプションケア」の中に入れて、推進していく、という流れがあると聞き、学童期思春期メッセージとの親和性を改めて感じました。
世界水準の性教育と言ったときに典拠とされるのは、現在ではユネスコがまとめた「国際セクシュアリティガイダンス(2018年)改訂」といっていいでしょう(8つのキーコンセプトに基づいて、年齢別の学習目標と内容が示されていて、いわゆる性教育だけではなく、人権やジェンダーの問題、暴力や安全の確保などについても包括した内容です)。
この中に入っているような内容を、お子さんが学童期思春期にしっかり受け取ることができれば、ヘルスリテラシーだけではなく、自己肯定感や他者を尊重しながらコミュニケーションを深めていく力など、様々な成長をバックアップできるように感じました。
お子さんにこういった情報を届けるために、まず保護者の意識や知識を支えていくことが、学童期思春期メッセージにできる大きな役割だと言えます。
プレコンというと、「妊娠前の女性とカップル」をイメージしますが(そしてWHOの定義では確かにこのように対象者を絞っています)、日本のプレコンが対象としているのは「前思春期から生殖可能年齢にあるすべての人々」なのです。
6歳から18歳までをカバーする学童期思春期応援メッセージが、プレコンセプションとして活用できる可能性を感じた講座でした(了)。
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