開催報告:行政に相談するという選択肢がない〜子育て当事者7918人のアンケート回答を読み込んでの意見交換会〜
0 はじめに
11月2日、児童虐待防止推進月間啓発イベントとして、「子育て当事者7918人のアンケート回答を読み込んでの意見交換会」が開催されました。
今回の会の報告者であるライターの飯島章太が、本イベントについてレポートします。
1 概要とテーマ「自ら支援を求めることができない人/時」
NPO法人きずなメール・プロジェクトでは、全国の自治体にて「きずなメール事業」を行なっています(事業についてはこちら)。2022年度、23自治体の約4万人の子育て当事者にアンケートを実施し、7918人の回答が集まりました(データはこちら)。
本イベントは、その7918人の回答に目を通しながら、あえてアンケートに答えなかった人たちのことを想像するために企画されました。テーマは「自ら支援を求めることができない人/時」。初めての試みなので、妊娠期957人の回答に絞って議論しました。
当日は以下のタイムテーブルで行われました。
①会の趣旨説明(大島)
②「統合データ」の紹介(大島)
③本稿筆者による質的データ分析
④団体内の意見集約シートを読んでの意見交換・感想等
2 相談窓口を利用することが、選択肢に挙がらない
本イベントにおいて、印象的だったトピックを一つご紹介します。
妊娠期957人のアンケートの分析結果からは、妊娠期の方が行政などの相談窓口を利用することが困難である状況が浮かび上がりました。ポイントは3つです。
①妊娠期においては、つわりをはじめとした様々な体調不良があり、そもそも外出することが困難で、孤立感を抱きやすい。
②特に周囲からの無理解や相談のしづらさは、より一層孤立を感じやすくなる。
③実際の出産・子育ての準備・行動の中で、行政等の相談窓口を挙げた回答は数件のみ。
以上から、妊娠期の方にとって、相談窓口に相談するということは、出産の準備・行動の選択肢にすら挙がらない可能性が高いことが、分析結果からわかりました。
3 まとめ:助けてと言えない場合とは
議論では他にもさまざまな視点や切り口が出されて、最終的に、妊娠期に行政機関などに「自ら支援を求めることができない人/時」とは、次のような場合ではないか分析しました。
①自分の体調の状態が整っていない
②時間に余裕がない
③自分の状況に理解がない
④相談できる関係性を築けていない
⑤支援の情報を知らない
⑥コロナ等感染症リスクを避けている
妊娠期の方に支援を届けるためには、上記の点を踏まえることが重要と考えています。
詳細な分析はスライドをご覧いただけますので、必要な方はこちらにお問合せください。
子育て期6961人の回答についても、今後、同じような分析を予定しています。開催日時は団体HP等でお知らせしていきますので、チェックしていただければ幸いです。
記事をご覧いただき、誠にありがとうございました。(了)
ライター 飯島章太
フリーライター。児童相談所に勤めた後、ビジネスや子ども福祉に関わるライターとして活動。著書に『図解ポケット ヤングケアラーがよくわかる本』 。ブログ「けあけあ 子どもをケアする人がケアされる社会に」(https://mumeinojibunshi.com/)。