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利用者の方に「伝える」という戦い〜「公共のことば」をかんがえる

2023年7月5日

Flat vector illustration of a group containing inclusive and diversified people all together without any difference.

コンテンツチームの古屋です。

先週から今週にかけて、自治体の行政情報をメール(LINE)用の配信原稿に書き換える業務に取り組んできました。
わかりやすさと公共性の狭間について考えさせられる日々の中(前回のブログでも触れています)
ヒントになりそうな言葉に出会いました。

「人間の多様性を研究しようとするなら、身近なところを見つめなければならない。しかし人間の一般性を研究するにあたっては、遠くを眺めることを知らなければならない。固有性を発見するためには、まず差異の観察から始めなければならない」

これは、フランスの哲学者ルソーの言葉だそうですが、ルソーの本を読んでいたわけではなく、正確な引用先はわかりません。

が、ここで挙げられている

多様性、一般性、固有性。

という三つの見方をとても興味深く感じました。
公共、ということを考えるのに、役に立つような気がしたからです。

多様性→どんなに色々な考えがあるかという、バリエーション
一般性→どれだけ多くの人が同じ考えなのかという統計的価値。
固有性→そのものにだけ存在する独自性。

というふうにでも言い換えることが出来るでしょうか。
もっとわかりやすくするために、動物に当てはめて考えてみました。

「犬」という種はある程度「一般性」のある言葉です。あの動物はなに?と聞いて、多くの人が「犬」とわかる、ということは、一般的な言葉だと言えるからです。
その中に、ハスキーやビーグルや柴犬という「多様性」があり、さらに柴犬の中にも、個体差がある。これが「固有性」と言えそうです。

ハスキーやビーグルも、一般性のある言葉だ、という人もいるかもしれません。
確かにそうだと思います。
ここでいう一般性というのは、力の方向のことではないでしょうか。

一般性というのは、多様性や固有性を束ねる方向。
一方、多様性というのは一般性の外側へ飛び出す力、
固有性は、グルーピングの中での個体差、と言うこともできそうです。

公共性のあることば、というと、「一般性」があればあるだけいい、と思いがちですが、実際にその街に住んでいる人々は「多様性」にあふれていて、一見同じ条件に見える人でも、ひとりひとり「固有」の状況の中を生きています。
(ハスキーは確かに「犬」ですが、犬とは人に慣れやすく従順な性質を持つ、などとすれば、犬にもいろいろいる、と抗議されそうです)

その多様性や固有性を溶かして、一つの鉛の塊のような一般性でまとめてしまっては、本末転倒のように思います。
むしろ、その多様性や固有性を、どこまで保ちながら一般化の方向へ行けるか、という考え方が重要になってきそうな気がします。

いわば、練り切りではなくミルクレープでなくてはならないということです。
混ぜ合わせるのではなく、違いは保ったまま重ねるわけです。

それを突き詰めていくと、様々な多様性の羅列になりがちです。
「こういう人はこうしてください」というバリエーションの羅列は、確かに多様性を大切にし、なおかつあらゆる人を網羅するという意味では一般性もあると言えそうですが、その情報を利用する人からしたら不便そうです。

その情報が該当する人も該当しない人も、等しくすべての情報が眼前にあって、その中から自分にとって有用な情報だけを選び出す作業は膨大です。

自治体のホームページなどを見ていると、それぞれ様々な努力で、この一般性と多様性の加減を調整しながら、なんとか利用者の方に「伝える」という戦いを切り抜けているのだなと思うことがたくさんあります。

ルソーはそれぞれの研究に対して、違う着眼点を持つべしと言っています。
一般性を知るには遠くを、多様性を知るには近くを、固有性を知るには差異を見よと。
その真意をすべて汲み取れるべくもありませんが、この3つの座標を意識しながら、公共性についてさらに考えを進めてみたいです。

今回は、普段考えない側面から、公共性について考えてみました。

「自治体が編集する自治体情報」はさることながら、
「きずなメールが編集する自治体情報」が出来る役割はなんなのか。

そんなことを引き続き考えながら、日々の業務に取り組んでみたいと思います。(了)

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