きずなメールが広がる未来を、サポーターの方とどう描くか

Charity, support and help from community. Cartoon tiny people hold hearts near donation box, group of volunteers give money and assistance flat vector illustration. Awareness, fund, solidarity concept
団体では2024年、きずなメール基金を設立しました。きずなメール事業を「テキストメッセージでつながりつづけるセーフティネット」と位置づけ、セーフティネットをさらに広げ、子ども虐待を減らすことを目指すためです。
きずなメール基金では、人でも多くの子育て当事者に「きずなメール」のテキストメッセージを届けるために、基金への寄付も広く募ります。テキストメッセージングによる社会変革に賛同する個人・法人とつながって、テキストメッセージを通して人と人との新たなつながり方を広げていくことを目指しています。
この“人と人との新たなつながり方”について、どんなつながり方を私たちがデザインしてステークホルダーの方々に提案できるかによって支援の広がりは変わってきます。
現在団体では、きずなメールを全国に届けることを目的として「きずなメール・サポーター」による寄付という形で支援を頂いています。また2021年には「きずなメール」をやさしい日本語にして支援層の拡大へつなげるための、クラウドファンディングを実施し、大きな支援を頂きました。
きずなメールサポーターの募集やクラウドファンディングを経て、きずなメール基金によってテキストメッセージングによる社会変革を行う際に、その先にどんな社会を描くのか。その描いた社会を実現するために、“人と人との新たなつながり方”をどうデザインするのか。
そのための第一歩として、「きずなメールはどんな社会を描くことを期待されているのか」、ということを団体の中にいる私たちがまず理解することが先決です。
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ある本を手に取りました。
ジョブ理論とは、「人がなぜそれを買うのか?」という、顧客が商品やサービスを買う行為そのもののメカニズムを解き明かした理論です。
ここで言うジョブとは、ある特定の状況で人(顧客)が成し遂げたい進歩のことです。
また、ジョブを片付ける手段として、人が特定の製品やサービスを消費する行為のことを“雇う”と呼んでいます。
つまり、ジョブ理論は、顧客は単に商品やサービスを購入しているのではなく、解決したいジョブを片づけたくて、その商品やサービスを雇用(消費)するという考え方です。そして雇用してもらうための鍵は、顧客の生活のストーリーを細かく理解し、顧客自身がことばにして要求できるものよりもはるかに優れた解決策をデザインできるようになることである、と書かれています。
はじめ、ジョブとか、雇用、という日本語で表現された文章で説明されても無味乾燥なイメージがして、なかなか理解が難しかったです。
でも読み進めてみると、実際自分のすべての行動はなんらかの意図を持っていて、朝から晩まで決断の連続であるわけです。
1日24時間、365日、自分の「ジョブ」を何かを「雇用」して「片付ける」ことで、理想の1日を過ごすことができているし、反対に選択肢の中のどれを「雇用」するかで思い悩む日もある。
そんな日は「片付ける」ことができず、この「ジョブ」が遅々として進まず結論が出せないことに苛立つ日もある。
そんな風に自分に置き換えて読んでみると、なるほどと感じました。
中でももっとも目の覚めるような思いがしたのは、
「あなたが売るのはプログレス(進歩)であって、プロダクトではない。顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片づけるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければならない。」
という一文でした。
寄付という行為は、商品を購入することと完全に同義ではありませんが、どちらも対象者がアクションしたいと思わせるほどの強い理由を伴ってはじめて、行動に移す点では同じだと考えられます。つまり、顧客の片付けるべきジョブにとって、新しい解決策は、彼らが進歩を手に入れ、生活をよりよくできるものでなければなりません。
これを寄付に置き換えてみると、寄付することによって生活が、社会が、今よりもっとよくなるものでなければならない。そしてそのために、寄付して下さった方が寄付という行為で片づけられた(どうしても”片付ける”という表現の仕方は共感できませんが)「ジョブ」は何だったのか、という文脈を深く理解することに一番重きを置かなくてはならないと思いました。
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私が個人的に寄付をした時のことを思い返しました。寄付した際、寄付することによって何を期待していたのかを振り返ってみると、寄付をすることによってこの団体から何かをしてほしいとかサービスを得たいとかよりも、この団体の考え方や事業が広まることで、自分の望んでいる社会像に一歩近づくかもしれない、そういう社会で暮らせたら自分だけでなく家族ももっと幸せかもしれない、もっと言えば、もし自分の家族や知り合いが日々の暮らしの中で困りごとに遭遇した時、この会社のこの事業がすぐに利用可能な状態にあったらよい解決策になるかもしれない、というような淡い期待を込めてのものでした。
そう考えてみると、一人一人の寄付には、一人一人の寄付に至るまでのストーリーがあるはずです。
きずなメール基金を運用してテキストメッセージングによる社会変革を行うとなった際に、その先にどんな社会を描くのか。私たちは、どんな未来を描いてそれを形にすることを求められているのか。
きずなメールが広がる未来を、サポーターの方とともに描けるように、これまで団体を寄付という形で支援して下さった方々がどんな気持ちを込めて支援して下さっていたのか、少しでも真意を汲み取るところまで近づけるように、と思っています。(了)