自分の「本当の能力」とは?
コンテンツチームの荻原です。
現在、より年齢の高いお子さんたちに向けた原稿について日々検討中です。
お子さんへの言葉がけを考える中で、
ひとの成長は遺伝によってどの程度決まっているものなのだろう、ということが気になりました。
先天的(遺伝)、後天的(環境)という二軸をどう考えるかによって、お子さんへのお声がけも変わります。
例えば、「友達を作るのが苦手だ」というお子さんがいたとして、それはもって生まれた遺伝の性質なのでしょうか。それとも、育ってきた環境が作り上げた性質なのでしょうか。
もし人の性質が遺伝で決まっているとすれば、
「苦手なりに方法を考えていく」
「友だちを作ろう、と意気込まずに自分にとって得意なことをする延長で友達のことを考えていけばいい」
など、
自分にとって自然体である性質を、無理して変えることなくうまくやっていく方法
を一緒に考えていけるかもしれません。
一方で、あなたはこういう性質だ、と決めてしまうことで、それ以外の可能性を断ってしまうのではないかという懸念が生まれます。
また、環境が性質をつくると考えた場合はどうでしょう。
「あなたはまだ友人をつくるスキルを知らないだけだから、きっとできるようになる」
「これまでの環境を変えれば変わることができる」
など、
自分の外側に原因を考え、やり方次第で自分は変われるということが希望になるかもしれません。
一方で、行き過ぎるとできないのは自分の努力が足りないせいだと思い詰めてしまうのではないかという懸念が生まれます。
まず結論から言いますと、ひとの能力というのは、遺伝的なものと環境的なものが絡み合って表に現れている、というのが一般的な見解のようです。
たしかに、感覚的にも納得です。
では、「遺伝」と「環境」どちらの割合が多いのか。
このことについて、ちょっと意外な研究の結果が、本に載っていました。
「エピソードでつかむ児童心理学」(ミネルヴァ書房)という本です。
その中の、「コロラド養子プロジェクト」という研究について。
これによりますと、「幼児期には比較的、環境の影響が強いのに、児童期を通じて遺伝の影響が強まっていく」のだそうです。
これは意外な結果だと思いました。
長く生きれば生きるほど、様々な環境を経験し、後天的に身についてくるものが多そうに思えます。
でも実際には反対で、成長するにつれて、その子が本来もっている性質があらわれて来るという結果。
不思議に思いました。
この疑問について、この本ではこのように結論づけています。
「年齢が上がることで、自分自身で環境を選び取ることが出来る。幼児期には選択の余地なく与えられた環境にいるが、児童期になれば環境をある程度自分で選び、大人になればさらにコントロールできる」
つまり、幼児期というのは自分が本来持っている能力が、環境の力によって制限を受けている。だから環境の影響力が大きくなる。
その後、自分のもっている能力を発揮するための環境を、自分で選ぶことが出来るようになると、本来の力を発揮しやすくなり、環境の制限からフリーになるということなのです。
つまり、環境というのは、人が本来持っている能力を、制限する方向に働く。
私は初めに、遺伝と環境、どちらに重きをおいた言葉がけでも、一定の懸念が生まれることを述べました。
しかし、この研究結果を読んで思ったのは、ひとりの人間がどんな大きな能力を有しているのかは、誰にもわからない、ということです。
遺伝は常に環境のフィルタを通さなければ把握できない。
つまり、どれだけの能力が自分に受け継がれているかは、常に未知なのです。
そう考えるとなんだか、もっと根源的な希望のようなものを感じることが出来ました。
これから自分の未来を信じて進んでいく児童期、思春期のお子さんにもぜひこの研究結果を知って、自分の力を開花していくことに臆さずチャレンジして欲しいなと思いました。
そして、自分自身に対してもそれは同じ。
まだまだ出し切っていないと信じて、未知の自分にチャレンジ!していきたいと思います。(了)