テキストメッセージとしての「きずなメール」
(コンテンツ担当:松本ゆかり)
ふだんは「きずなメール」読者に向けた原稿制作や編集仕事が多く、こうしたアウトプットの文章を書くことはじつは少ないですが、これを機に、少しずつでも書いていこうと思います。
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NPO法人きずなメール・プロジェクトの設立は2010年11月。今から11年前になります。自分自身の妊娠出産、子育てを通じて知ることになった「孤育て」という社会課題の解消に役立つ原稿を作る。これがコンテンツ担当としての最初の仕事でした。
妊娠期の方やそのパートナーを読者対象とした「マタニティきずなメール」を書き上げていく際、私は何を支えにしていたのだろう。今回はそこを振り返ってみます。
3つ浮かびました。ひとつは、「編集者としてのキャリア」。ひとつは「監修者の存在」。ひとつは「自分自身の妊娠出産経験」。この中で、支えでありながらもその取り扱いに苦心したのが「自分自身の経験」でした。
文字通り“身をもって”経験した妊娠出産のインパクトというのはやはり大きく、「当事者感覚(意識)」というものが、意識せずとも文章に現れます。ですが、妊娠出産というのは、その経過は人によって違いますし、なにより「命」に直結する出来事でもあるので、当事者は外部からの刺激に敏感で、傷つきやすい時期にあります。
そのため、「自分自身の経験=当事者みなが共有できるものではない」という認識は大事でした。言葉を換えると、独りよがりにならない内容で、でも読んでもらう人が、できるだけ共感し、かつ役に立つ読み物にしよう――これが大きな編集方針となりました。そして、産婦人科医と管理栄養士という専門家の監修者の存在と、編集者として持ち続けてきた「ひとりでも多く人に読んでもらいたい」と心持ちが、何を伝えるかという内容面でのバランスを保つためとても役立つものでした。(続く)