『さよなら、産後うつ(村上寛著)』を読んで/子育てにおけるGender equalityを促すマタニティきずなメールRP⑦
コンテンツチームの荻原です。
妊娠期の「マタニティきずなメール」と、子どもが生まれてからの「子育てきずなメール」で構成される私たちの「きずなメール事業」では、年に一度、原稿を最新の状態に保つためのリニューアル作業を行っています。
どちらのコンテンツも医師や管理栄養士による監修を受けており、監修の専門家によるファクトチェック、読者から届いた声の検討、また、妊娠出産、子育ては時代によって変化しますので、その変化などに対応しています。
今年は様々な条件が重なり、例年よりも規模を大きくし、新たな視点を追加して「マタニティきずなメール」のリニューアルを行うこととなりました。
この大規模なリニューアルを「マタニティきずなメールリニューアルプロジェクト」として、こちらで進捗状況を報告しています。
ブログのタイトルにある「マタニティきずなメールRP」とは、「マタニティきずなメールリニューアルプロジェクト」を指しています。
『さよなら、産後うつ(村上寛著)』を読んで
私たちは今、マタニティ原稿のリニューアルの大きな柱として、“母親も父親も同じように読み、未知なる子育てに協力して取り組めることを促すスタンス”を目指しています。
そのための言葉の機微を、もっと知りたいと思い、妊産婦、そして父親に向けたメンタルヘルス専門外来をされている医師の村上寛先生の著作を読みました。
本を読んでいく中で、自分ではこの先入観に気付くことができていなかった…とハッとさせられる個所がたくさんあり、原稿をリニューアルしていくうえで、とてもためになりました。
数多くのご紹介したいことの中から、自分の中で特に気づきの大きかったことを紹介します。
おなかが大きくなっていく喜びを、つらさが上回ってしまうこともある。
「おなか大きくなってきたねえ」と、私自身も妊娠した友人などに対して、声をかけてきた記憶があります。
大きくなるお腹は赤ちゃんが成長している証なのだから、喜ばしいことだろう、と無意識のうちに決めつけてしまっていた自分に気が付きました。
喜び以外のどんな感情が考えうるか、著作にはいくつかの例が出ておりますが、なるほど…と深く納得してしまいました。
日々変動する肯定感と否定感を、分けて考える
これは、「仕事」と「妊娠」に同時に適応しなければいけない妊婦さんについての章で出てきたことですが、それ以外の要素に対しても言えることだと思いました。「仕事」以外にも、「運動」、「食事」、「趣味」、「交流」など、「妊娠」との両立の過程で、変容せざるをえないものはたくさんあります。したいようにできないもどかしさがいろいろな方面から募ると、「妊娠」に対して否定的な思いが湧いてしまうこともあると思います。そこで、これらの要素を切り離して考えていくという視点は、とてもいい方法だと感じました。
「産後だからね」の両面
人は、何かに当てはめられたり枠に入れられたりすることで、嫌な思いをすることもありますが、それによって楽になることもあると思います。
「産後だもん、イライラするのは仕方ないよ、ゆっくりやっていこう」。そういう言葉を、私自身もかけられたような記憶があります。そんな時、苦しい気持ちとほっとする気持ち、両方が浮かんできた記憶があります。「産後」が終わるまで、逃れようのないことなのかという苦しさと、そうか自分が悪いせいではなかったのかとほっとする気持ちです。
「産後だから仕方ない」とやさしさのつもりで周りが言ってくれることも多いです。それに救われることもあると思います。
その一方で、「原因を考えて改善にいたる可能性を失うことにも繋がる」と村上先生は書いています。確かに、「産後」という言葉に、自分のざわめきすべてが押し込められてしまうのは、それはそれで苦しいことです。
周りも自分自身も、苦しみと安堵、その両方を受け止めることが「心」にとっては自然な在り様なのだと思いました。
以上、3点を挙げてみました。
ほかにもたくさんの気づきが詰まった本でした。
妊娠、出産、育児、仕事、夫婦のコミュニケーション。
あらゆる要素が絡み合い、これを乗り越えていくことの困難を、改めて感じました。複雑で繊細なものを、わかりやすく簡単にしてしまうと、どこかで無理が生じてくる。
複雑なものを、複雑なままでわかりやすくする、それが「メンタルヘルスを整える」ということなのかな、と感じつつ…これからの原稿検討にも、活かしていきたいです。(了)