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【読みもの】すぎなみ里親プロジェクトで見て聞いて。

2020年2月3日
こんにちは! 広報担当の野島です。
みなさま、里親(さとおや)についてどのくらいご存じでしょうか?

「里親」で検索すると、まず初めに挙がるトピックスは“動物の里親”。
私にとって“人の里親”はドラマの中でしか見たことのない、自分の生活圏にはいないどこか外のお話でした。

「本当はもっと知りたかったけど、どこで知ることができるの?」
「大人になったけど、今まで誰にも教わらなかった。」

そんな方へ。
歩いて行ける距離、同じ生活圏にも「里親」ーーそれに関わる方々は存在しています。
この記事をきっかけに、読む前より少しだけ、「里親」が身近に感じられますように……。

 

 

 

―――目次―――

  1. 「里親」ってなんだろう?
  2. 「すぎなみ里親プロジェクト」とは?
  3. 「里親支援」に関する職業
  4. 「特別養子縁組」と「養育里親」
  5. 実親の気持ち~本当はひきとりたい。けどできない。~
  6. 里親の気持ち~中途で親になるということ。~
  7. 乳児院の子どもたちの暮らし
  8. 子どもの気持ち
  9. わたしたちにできること
  10. 山田さんからのメッセージ
  11. 動画 “春ちゃん手をつなごう”
  12. 最後に

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・・・

「里親」ってなんだろう?

そもそも「里親」ってなんだろう?
今回私が訪問させて頂いた場所は、杉並区の「聖友乳児院」。
「乳児院」とは、さまざまな事情により家庭で育てることが困難な乳幼児を養育する児童福祉施設です。

近年、児童福祉法の一部改正に伴い、子どもは「家庭的養育をするのが望ましい」という国の方針が明確に打ち出されました。
施設ではなく“里親家庭で育つ”子どもを増やしていこうというものです。
そういった経緯で、“里親の支援”という重要な役割も、乳児院が担っているのです。

「里親」とは
そういった、わけあって乳児院で暮らしている子どもたちを、自身の家庭へ迎え入れ、養育をする方のこと。
「聖友乳児院」でも、 “里親を増やす” “里親で育つ子どもを増やす” 取り組みが始まっています。

そこで、今回は「聖友乳児院」で乳児院の子どもたちと里親さんの交流を支援するお仕事をされている、「里親交流担当」の山田愛弓さんに、「里親」についてのお話を伺ってきました!

▲自転車で7分ほどの距離でした!

 

 

 

・・・

「すぎなみ里親プロジェクト」とは?

もともと山田さんは、乳児院で保育士として子どもたちを養育していました。
3年前に「里親交流担当」となり、

  • 里親を広く知ってもらう活動
  • 乳児院の子どもと里親の交流支援
  • 里親になった後のサポート

等を行ううちに、
「もっと地域の方に里親を知ってほしい!」
「里親制度を知ってもらえる気軽な場所があるといい!」
という思いがつのり、2018年に「阿佐ヶ谷里親プロジェクト」を同法人の里親支援専門相談員とともに、立ち上げることとなりました。

そして2019年、
「阿佐ヶ谷だけでなく杉並区全体でもぜひ広めてほしい!!」
との声をいただき、 “阿佐ヶ谷” から “すぎなみ” へ。「すぎなみ里親プロジェクト」へとパワーアップしたのです!

 

 

今回の訪問のきっかけは、2019年「すぎなみ里親プロジェクト」開催のイベント「めざせ!里親の住みたい町NO1!」の中の「里親ワークショップ(9月8日開催)」に団体スタッフ松本が興味を持ち、参加したのがきっかけ。

▲楽しそうなポスターを見て、思わず「行きたい!」と思ったそう。

高円寺のおしゃれなレンタルスペースで行われたワークショップには、約30名が集まり、里親制度についての説明や、実際の里親さんのお話を聞くことができる等、充実した時間を過ごせたそう♪
カフェのような雰囲気ということもあり、軽やかな気持ちで足を運べるのもよかったとのことでした。

「すぎなみ里親プロジェクト」はこのように、「まずは地域の方に知ってもらうきっかけづくりを!」と、
地元のカフェなどで明るく楽しく里親について知れる“場づくり”を大切にしていらっしゃいます♪

 

 

 

 

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「里親支援」に関する職業

山田さんがいま、里親支援として行っているのは、

  • 乳児院の子どもたちと里親さんをつなぐこと
  • 里親子と地域とをつなぐこと
  • 里親子同士の横のつながりをつくること

このように、人と人とをつなぐお仕事を担っています。

“乳児院の子ども” と “里親” をつなぐというのは、まさに里親支援ならではですが、
“地域とつなぐ” や “横のつながり” というのは、一般のご家庭でも大切なことですよね。

 

 

 

 

 

 

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<「里親」についてもっと知りたい>

「特別養子縁組」と「養育里親」

里親とひとことで言っても、じつは色々な種類があります。

今回の記事では、主に「養育里親」についてお伝えしていきます。

最近は、不妊で苦労されていたり、「年齢の壁があり産むのはあきらめたけれど、わが子がほしい、できれば赤ちゃんのときから一緒にいたい」と「特別養子縁組」を望む方が多く、ひとりの候補に、ときに何十名と手が挙がるような状況だそうです。

一方、「養育里親」は、実子として育てるのではなく、あくまで実親が養育できない期間、いずれ実親の元に戻ることを想定して養育することを「委託」される状態です。

あくまで「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」ために行われるもの。

でも、希望者はまだまだ足らない状態で、そのため、そもそも養育里親という制度があるということをひとりでも多くの方に知ってもらうことから始めているそう。

 

 

「特別養子縁組」と「養育里親」の異なる点というと、国からの補助金の有無もあります。

里親になることを検討するにあたり、「経済的にちゃんと育てられるか不安……」という方にも、このような金銭的なサポートもあるということを知っていただけるといいなと思います。

この補助金を活用して、「実子と同じ習い事に里子も通わせることができた!」という方もいらっしゃったそうな。

 

 

 

 

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実親の気持ち

~本当はひきとりたい。けどできない。~

この「養育里親」を必要としている子どもたちは、実はたくさんいます。

東京都に11院ある乳児院にいる子どもたちの、約半分は家庭復帰――つまり実親さんの元に戻っていきます。
里親家庭へ行くのは、約2割。
残りの3割は、年齢が上がると児童養護施設へと移ることになるそうです。

これを知って、私がとても意外だと思ったのは、約半数のお子さんが “実親さんの元に戻る” のだということ。なぜだか私は “虐待などの理由” によって乳児院へ入り、 “実親との関わりはないもの” だと思い込んでいたのです。

けれど、実際は
多くの実親さんたちは
「自分で育てたい」
「必ず引き取りに戻る」
と心に決めて頑張っているそう。

 

 

「いまは育てられない」理由としては、

  • 心の病気
  • 借金等経済的な理由
  • シングルマザーで周りに支援者がいない場合

など様々。

こういった、自分自身が厳しい環境である中でも、
「いつかは自分で育てたい」
という気持ちでいる実親が多い。という事実を知れて、なんだかとても温かい気持ちになりました。

また、乳児院にいる時も、里親に委託している時も、「面会」といって、子どもに実親の愛情を伝える機会が設けられています。
それは、子どもにとって、「自分は愛されている」と感じられる、とても大切なひと時になるそうです。

 

 

 

・・・

里親の気持ち

~中途で親になるということ。~

「養育里親」になるというのは、どんな気持ちなのでしょうか。

実子を持つということは、お腹の中にいる頃から少しずつ心の準備をし、母になるという自覚が芽生える“時間”があります。
しかし、中途で親になる場合は、その準備をどのようにしたらいいのでしょう。一人だとわからないことだらけです。

私は今でこそ親になりましたが、実子ができる前は、まるで “子ども” のことを知りませんでした。
お正月に親戚の子と会わされても、どう接していいかわからず、その子が何歳なのかもピンとこない状態でした。(今はパっと見れば大体何歳かわかるようになりました。)

保育士さんとして働いていたり、歳の離れたきょうだいのお世話をしていたといった経験でもない限り、突然子どもと遊んだり、食事を用意するということは、とても難しいことです。

実際、
「子どもを育てた経験はないけれど養育里親になりたい」
「里親制度に興味がある」
いう方にとっても、このことは不安の種だといいます。

そんな不安を抱えた里親さんに寄り添い、少しずつお手本を見せて、見守っていくのも、乳児院での里親サポートだと山田さんが教えてくれました。

里親交流担当は、まずは子どもが里親家庭に委託されるまでを支援します。
そして、里親子としての暮らしが始まってからは、里親家庭を支えるいろいろな機関や支援員とともに、
少しずつ “親” になっていくのを、サポートしていきます。
月齢(年齢)に応じた食事のことから、遊びのこと、おむつのこと、寝かしつけのこと……etc

 

里親になると、実親さんとの「面会」がある場合もあります。
里親にとっては、 “子どものためには大切なこと” と頭では理解していても、どうしても複雑な感情を抱いてしまうことも。

こうした感情に寄り添い、時には受け止める。そういった心のサポートも、山田さんの大切にされていることのひとつです。

 

 

 

 

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乳児院の子どもたちの暮らし

 

乳児院の子どもたちは、毎日どのように暮らしているのでしょうか?
実親でも里親でも、
「家庭」で育つのと「乳児院(施設)」で育つのとは、どう違うのでしょう?

今回、山田さんに聖友乳児院内を案内していただくことができ、初めて乳児院の様子を見学させていただきました。
乳児院のお部屋や置いてあるもの、子どもたちの様子を見て、

普段子どもを預けている保育園と
“あ、そんなに変わらないんだ”
と感じました。

私は、「乳児院」と聞くと、なんとなく「施設」=「悲しい、寂しい、義務的」というイメージを抱いていましたが、実際はみんなよく笑って、元気いっぱい、お部屋も懐かしいお家のようで、印象が覆りました!

調理師さんの作ってくれるごはんをみんなで食べ、お昼寝もみんなでお布団を敷いた部屋で。
いつでも大人数というわけではなく、家庭復帰や里親家庭で暮らすことを想定し、少しでも家庭的な環境をということで、各お部屋に子ども3名程度、可能な限り少人数過ごしているそう。

クリスマスや、お誕生日には、素敵な手作りのごちそうもあります♪
季節の行事を大事にしたり、ごはんは基本的に調理師さんの “手作り” 、そういう点は、もしかして家庭よりていねいな暮らしかもしれません。
(少なくとも私の家よりはよっぽど!)

 

私達が見学させていただいたのは、お昼の時間帯。

けれど、
保育園では、夜になると親がお迎えにきて、お家に帰る。
乳児院では、夜になれば寝て、そして明日もまたそこで起きる。

保育士さんは愛情深く接しているけれど、お仕事(シフト勤務)なので、いつでも好きな時、24時間一緒にいられるわけではないのも現実です。

 

▲お部屋のようす

 

 

 

 

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子どもの気持ち

 

基本的には乳児院で楽しく暮らしている子どもたちですが、寂しさや、悲しさもあります。

施設にいるときは目いっぱいの愛情で接してくれている保育士さん。
でも、

「朝、おはようを言ってくれた先生と、夜も一緒に寝たいな~と思っても、寝るまで一緒にいることはできない」(山田さん)

朝来た人は、夜番の人と交代します。家庭で暮らす一般的な親子のように、ずっと一緒にいることは叶いません。
甘えたい。と思っても、いつでも甘えられるということはない。
そういう日常の積み重ねで、子どもたちは少しずつ我慢することを覚えていくそうです。

 

また、まだ自分がお腹にいたときに、実母の抱いていた
「望んでいなかった」「あなたのせいでパパは出てった」「この子がいなければ」
といった感情は、少なからず胎児に影響を及ぼし、喪失感をもって生まれてくることがわかってきたと山田さんが教えてくれました。
かつては、愛着関係というのは、乳幼児期に形成されると思われていましたが、胎児時代から影響しているということがわかってきたというのです。

そのため、そうした背景を持っている子どもは、心の揺れが大きかったり、愛着形成のところで難しい場合があるといいます。

そして、新しい人と会った時
「この人にはどこまで甘えていいんだろう。」
「信頼していいの?」
と思い、
そんな “心の揺れ” が行動となって表れるのが「試し行動」です。

 

 

里親家庭で暮らし始め、試し行動が出る子もいます。
短く終わる子もいれば、長く続く子もいて。
最初はなかったけど、しばらく経って出る子もいる。

里親さんも事前研修で、そういうことがあることは当然知っています。
でも、現実として里子のそうした行動に、

“がんばる” し、 “がんばりたい”

けれど、どうしようもなくヘトヘトになってしまう……。

そうして関係がうまく行かず、乳児院へと戻ることになる、これを「不調」と言うそうです。
不調で戻ってきた子は、年齢的に児童養護施設へ行くことになる場合も多いそうです。

誰も悪くないのに、傷つく人が増えてしまう。とりわけ子どもは、喪失体験が増え、より深く傷ついてしまう
……とても悲しいし、やるせないです。

 

 

 

・・・

わたしたちにできること

「そんな悲しい連鎖は、少しでも減らしたい。」

そう感じた方、

協力できることが、あなたにも、私にもあります。
この記事をここまで読んだ時点で、あなたはこのことについて、もう、できることがあります。

それは、いつかどこかで出会う里親子に、心穏やかに、朗らかに接すること。

乳児院に来る子は、虐待や実親との別れ、生まれる前からの喪失体験といった背景を持っていることも多く、そうした子どもの養育は並大抵の大変さではないこともあります。
養育里親としての使命を理解して子どもに接している里親さんも、時に悩み、時に傷つきながら子育てしています。

 

その子は、時には学校でトラブルを起こすかもしれません。

親御さんは、学校に呼び出されることがあるかもしれません。

そして、里親をしていく心が折れそうになるかもしれません。

 

そんなとき、ぜひ

 

「大丈夫だよ」

「今日、うちでご飯食べて行けば?」

 

そう声をかけてほしいのです。
その一声をもらうだけで、里親さんは心が少し救われるんです。

 

そういう些細な気遣いが地域に増えれば、
里親さんの過ごしやすさ、生きやすさは変わります。
「もう少しだけ、がんばってみよう」のきっかけになります。

 

どうか、あなたの心に残りますように。

 

▲いつか出会うかもしれない未来

 

 

 

 

・・・

山田さんからのメッセージ

 

山田さんからお話頂いた、この仕事をやっていてよかったと思う瞬間、をご紹介したいと思います。

 

 

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動画
 “春ちゃん手をつなごう”

こちらは、イベントで一人の里親さんの「人形劇にしてはどうか」の声から出来上がった動画 “春ちゃん手をつなごう” シリーズ。
今後もアップされるようで、続きが楽しみです♪
動画は下記Facebookページより、ご覧いただけます。
すぎなみ里親プロジェクト

 

 

 

 

・・・

最後に

ここまで記事を読んでくださり、ありがとうございます。

里親の制度や登録の問い合わせは、お住まいの管轄の児童相談所が窓口になります。
「里親について詳しく知りたい」「なりたい」と思った方は、下記までお問い合わせください。

――――――――――――――
すぎなみ里親プロジェクト
info@satooya-project.com
03-3338-1849(聖友乳児院)
担当 山田
――――――――――――――

 


すぎなみ里親プロジェクト
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▲左から、松本、山田さん、野島

 


インタビュー協力:聖友乳児院 山田愛弓様
インタビュー:NPO法人きずなメール・プロジェクト 松本ゆかり・野島幸奈
挿絵・執筆:野島幸奈

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