【来訪】NPO法人Hand&Footの浅原ゆきさん
スタッフの野島です。
裂手症(れっしゅしょう)という言葉をご存知ですか?
私は、この日初めて知りました。
コトバは初めて知りましたが、出会ったことがあったことをふっと思い出しました。
以前特別養護施設で数日実習させて頂いたことがあり、そのとき私と仲良くしてくれた小学生の男の子。
彼は知的障害もあって、よだれがよく出るのでいつもハンカチを持っていて、気づいたら自分で拭いて、ときどき私が拭いたりも。
一緒に遠足に行ったときに、大人もゼェゼェするような山道を、てってを繋いで一緒に登りました。
彼のてっても今思うと裂手症で、片手の指が3~4本でした。
そのおててで私の手をぎゅ~っと握ってもくもくと歩いて、
その間ずーっと私は「爪が食い込んで痛いなぁ」と思いつつも、一生懸命山登りを楽しんでいる彼の気持ちに水を差したくなくて、結局最後まで痛いのを我慢した。
というなんてことない一場面です。
大きくなっているんだろうなぁ。元気かな。
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そんな、多くの人より少し指の少ないお子さんの母である、
NPO法人Hand&Footの理事長、浅原ゆきさんと、先日お話をさせて頂きました。
自分の知らない部分と、それでも母として強く共感できる部分と。
心に響くお話でしたので、記事を書かせていただきました。
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NPO法人Hand&Footさんは、
「誰であっても、どんな身体でうまれても、ありのままの自分で生きてゆける社会の実現」
というビジョンのもと、
「出会う前に知っている人がひとりでも増えること」
をミッションとして掲げ、
多くの人と少しちがう形の手足でうまれてきた子どもたちとそのご家族、当事者が交流できる場となるSNSを運営・管理している団体です。
現在は全国800家族以上がご利用されているそうです。
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裂手症とは、先天性四肢障害(せんてんせいしししょうがい)のひとつ。ほかにも、手足の指が5本より多かったり、少なかったり、みじかかったり、なかったり。様々なうまれつきの手足の形があり、「欠指症」「巨指症」「短指症」…など、それぞれに症状名がついています。
裂手症は、大体2万人に一人、先天性四肢欠損の子どもは、年間に約400人ほどが生を受けるそう。
出産前の段階でその症状に気づく割合は、ごくごく、ごくわずかで。
Hand&Footの登録者の場合 約850家族中2~3人だったそうです。
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浅原さんご自身も、お子さんが産まれてから気づき、戸惑ったそうです。
大きくなった姿がイメージできず、パッと心に浮かんだのが、「リコーダー」「鉄棒」だったそう。
学校でリコーダーの時間、この子はどうするんだろう? 鉄棒は?
登録したご家族のエピソードでも、
ただでさえ不安がいっぱいな妊娠中。やっと産まれて一安心。のはずが…
余計に不安が膨らんでしまい、心休まらず病院のベッドで夜な夜な情報収集。
その後も、不安ゆえに情報収集をがんばるかたわら、お気楽な発言をする夫。
「母親のせいだ!」と決めつけ、「指を隠すように」と腫れ物扱いする義母。
家の外では、可愛そうと思われたくなくて、強がって、平気なフリをして、
内では不安に押しつぶされそうで、家族に悟られぬようにお風呂で声をひそめて泣く。
心の葛藤の日々。
どうしてもぐるぐる考えてしまう日々が続く中、浅原さんがなんとなく納得できたきっかけは
3歳になり娘さんの二度目の指の手術が終わったとき。
「ああ、本当にこの子はこの指で生きていくんだ」
と、初めてストンと何かが心に落ちてきた感覚だったとか。
不思議なことに、親が受容できたのと入れ替わるように、3歳ごろ。今度は子ども自身が、自分と周りの子と違う部分を自覚するのだそう。
「どうして私の手だけ?」
「どうしてママの手とちがうの?」
…こう聞かれたら、なんて返せばいいんだろう。自分だったらとっさになんて返せるだろう?
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また、気になるのが周りの反応。
周りの子と少し違う手について、大人たちは触れちゃいけない雰囲気。
興味深々なお年頃な子どもたちの、ストレートな指摘。
…自分だったらどうするのだろう?どうしたらいいのだろう?
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こんな例と一緒にするな!と思われるかもしれませんが、「私だったら…」と想像するときに思春期の頃を思い出しました。
思春期で、顔に膿んだニキビがたくさんできたとき。
毎日毎日「嫌だなぁ。気づいてほしくないなぁ…学校行きたくないなぁ」と思いながら、渋々登校。
自分の姿を見られたくなくて、なんとなくうつむきがちで、極力目も合わせたくない。
予想以上に普段の日常「…気づいてるよね?いじられるのも嫌だけど、なんも言われないのもそれはそれで気になる。」
友だちからなんとなしに「○○ニキビやばくない??」と言われ、「そうなんだよ~」とその場では軽く返しても、
一人になるとふと思い出してちょっと傷つく。
矛盾しているようだけど、どれもほんとの気持ちだった気がする。
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自分がそのことに気が集中している以上、
何を言われても、何も言わなくても、傷つく。
それはどうしようもないことなんじゃないかな。
つまるところ、
私達に出来ることは、小さいことでも好意を伝えることなんじゃないだろうか。
気にしている子に、気にしていたことが気にならなくなるくらい自分自身を好きになってもらうこと。
そのために、その子の好きなところをたくさん伝えること。
些細なことでも口に出して「好き」を伝えることが、私達がすぐにできることなんじゃないかな。と思いました。
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子どもと毎晩ご飯時に喧嘩していたとき、ラジオから流れてきた曲
「サルでもわかるラブソング」
おれ!おまえ!すきーーー!!と一緒に歌って一緒に跳ねて、喧嘩のムードを払拭しています。
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NPO法人Hand&Footさんのウェブサイトはこちらです。
もし多くの子達と違う事で悩んでいる方、ご家族、お友達がいたら
ぜひのぞいてみて下さい。きっと良いご縁になると思います。
P.S.
そんな浅原さん、Hand&Footの皆さんの想いがたくさんつまった絵本。
現在は制作の途中だそうです。
強い想いや溢れる気持ちを視えるものに落とし込むのは本当に大変なことだと思います。
けど、沢山悩んで、時には失敗したりもして、一歩進んで二歩下がるような日が続いたとしても、無駄なことは一つもないと思うんです。
そんな全てが詰まった、たからものが出来上がって、それが子どもたちの手に渡ること。想像したらとても楽しみで、胸がきゅうっとします!!
素敵な絵本が、完成しますように。心より、応援しております!
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