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東京都小笠原村の妊娠・出産事情 最新レポート②

2011年2月7日

東京都小笠原村の妊娠・出産事情 最新レポート②

(東京都小笠原村の妊娠・出産事情 最新レポート①よりつづく)


離島ゆえの「急患搬送」

お産は島外出産にならざるを得ないとして、妊娠期間中の妊婦健診はどうでしょうか。このあたりについては、小笠原村診療所医療課係長の櫻田誠さんから話を伺うことができました。

「東京の産婦人科専門の先生に2カ月に1回、年6回来ていただいて、産婦人科の専門診療を開催しています。診療日は父島で4日、母島で1日。婦人科も含めると、年間で合計約200名ちょっとの方を診ていただいています。また先生の不在時は、常勤医が妊婦さんの週数に応じた妊婦健診を実施しています」

来島する産婦人科専門の先生は、往復で最低でも10日間の旅程になるとのこと。診てもらう側も診る側も、これが精一杯という状況です。

「島では、急病等により高次医療機関に加療を要する場合、“急患搬送”になります。妊婦さんの場合、通常の経過の妊婦さんが、32週未満に早産などの緊急事態が起こった場合は、急患搬送となります」

急患搬送とは、自衛隊の飛行艇で救急患者を移送すること。プロセスはおおよそ次のようなものです。

「診療所で対応できない救急患者が発生した場合、東京都を通じて海上自衛隊の水陸両用の飛行艇を要請して、都内病院に搬送して対応します。飛行艇は、日中なら父島の二見湾に着水し、海上自衛隊の父島基地に上陸して患者を乗せて再び海から離水します。

しかしながら夜間は、飛行艇の着水は有視界飛行となるため、着水できません。このため硫黄島の海上自衛隊航空基地に着陸し、平行して患者の方はヘリで硫黄島まで移送して、飛行艇に乗り換えます。

飛行艇に乗っている時間そのものは約2時間前後ですが、その間さまざまな安全確認や添乗する医師の手配、また天候にも左右されるため、要請から病院収容まで約9時間前後を要することになります。安全面を考えると、どうしてもこれくらいの時間を要してしまうのです」

患者はストレッチャーで機内へ。

患者はストレッチャーで機内へ。


二見湾に出る海上自衛隊の飛行艇US-1

二見湾に出る海上自衛隊の飛行艇US-1。

この“9時間”という時間と距離に、離島としての小笠原の状況が現れているとはいえないでしょうか。急患搬送は、通常の急患も含めると、年間約30件前後。切迫早産などによる妊婦さん急患搬送も、年に1、2件はあるそうです。

また診療所では、前出・村役場の村井さんと同じく、医療スタッフの確保にも常時頭を痛めています。

「とくに助産師さんは、村の妊婦さんの心のよりどころとなるため、なんとしても常時いてもらいたいと考えています。しかしながら村で分娩ができないため、それでも来ていただける助産師さんとなると、本当に少ないです」

島外出産は「安全」ですが、住み慣れた土地で家族の支えのものとでお産をする「安心」は少しあきらめなければならない。お産における「安全」と「安心」の両立が難しい場合もあることに改めて思い至るとともに、こうした小笠原村の現状に対して、私たちを含めた市民レベルで少しでも何かできることはないかと考えさせられた、今回の取材でした。(終わり)


取材・構成/大島由起雄(きずなメール・プロジェクト)


【関連リンク】
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