「間接費」は悪じゃない。きずなメールが挑む、孤独な子育てのない未来

こんにちは、NPO法人きずなメール・プロジェクトの井上綾子です。
今年6月から私たちはファンドレイジンググループを新設し、より多くの方にきずなメールを届けるための新たな挑戦を始めています。その一環として、先日2025年11月7日に開催された認定NPOカンファレンス「ignite!(イグナイト=点火する)」に参加してきました。
「社会課題解決をあきらめない」という情熱を抱く認定NPOのリーダーたちが集うこの場は、ファンドレイジングの最前線を学び、NPOを取り巻く常識を見つめ直す貴重な機会となりました。
「チャリティに対する考え方は完全に間違っている」TEDスピーカーが投げかけた問い

TEDスピーカーの一人でもある、ダン・パロッタ氏の基調講演のテーマは、非営利組織の「間接費」の問題でした。
彼は、社会課題解決に関する活動が「成果」ではなく「どれだけ節約したか」で評価するダブルスタンダードに陥っていると指摘します。
「節約と倫理性を混同するのはやめよう。社会課題解決のゴールの大きさと達成度で評価しよう」というメッセージでした。
「私の寄付は100%困難を抱えている方に届けてほしい」
このような声は多くの方の気持ちを代弁するものかもしれませんが、ダン・パロッタ氏は、この考え方がかえって非営利団体が大きな成果を出すことを阻害すると言います。
給与を低く抑え、間接費を避けるべきだという根強い誤解は、インパクト創出よりもコスト削減を優先させ、結果的に社会課題の解決を遠ざけている。
資金調達のための広告も、活動を継続し、必要な人に情報を届けるためには不可欠な経費であり、短期的な視点に囚われず、継続的な資金調達の重要性が強調されました。
きずなメール・プロジェクトが描く「大きな夢」
このカンファレンスを通じて、きずなメール・プロジェクトがファンドレイジングにおいて何を目指すべきか、多くの気づきを得ました。
私たちは現在、「児童虐待(マルトリートメント)予防」「孤独な子育て予防」といった、自治体にとっても顕在化した課題解決を訴求し、共同注視することによって事業を運用しています。
しかし、自治体を経由してセーフティネットを提供することの反対には、きずなメールを様々な事情で導入できない自治体があることも事実です。
自治体の状況に左右されず、きずなメールを妊娠期~子育て期の読者に直接届けるために必要な財源を、寄付という形で支援をお願いすると考えた時、きずなメールのどんな要素が「読者にベネフィットとして届くのか」「社会に対してどんな大きなビジョンを提示できるのか」という問いに、改めて向き合う必要があると痛感しました。
ダン・パロッタ氏は、非営利セクターは小さく考えるのではなく、「月面に行く」ような大きな夢を描き、冒険を語り始めるべきと語りました。
きずなメールが最終的に目指すのは、「孤独な子育て」を社会全体でなくし、すべての親と子が安心して、自分らしく生きられる未来を創造することです。
そして、講読することで妊娠期のプレパパ、プレママのペアレンティング・スキルの向上に寄与することができ、夫婦の間に生じやすい「情報の偏り」を解消してファミリーパワーを最大化できる取り組みでもあります。
これから、きずなメール・プロジェクトは、寄付者の方と共に「ビックピクチャー」を描いていきたいと思います。(了)
■TED日本語 – ダン・パロッタ:チャリティーに対する考え方は完全に間違っている https://digitalcast.jp/v/18622/
■NPO法人きずなメール・プロジェクト 体制変更のお知らせ https://www.kizunamail.com/news/16678/


