【抄録公開】「伴走型情報発信による不安軽減のエビデンス~「声なき声」とつながり続けることによる乳幼児虐待予防の可能性 港区子育て応援メール配信事業に関わる効果分析」(一般社団法人日本子ども虐待防止学会第29回学術集会)
NPO 法人きずなメール・プロジェクト(東京都新宿区)は2023年11月、一般社団法人日本子ども虐待防止学会主催の第29回学術集会滋賀大会(テーマ:すべての子らを、世の光に)にて、「伴走型情報発信による不安軽減のエビデンス~「声なき声」とつながり続けることによる乳幼児虐待予防の可能性 港区子育て応援メール配信事業に関わる効果分析」について口頭発表を行いました。
★発表の抄録を、同学会及び港区の許諾を得て、以下公開いたします。★
伴走型情報発信による不安軽減のエビデンス
~「声なき声」とつながり続けることによる
乳幼児虐待予防の可能性
港区子育て応援メール配信事業に関わる効果分析
【目的】
乳幼児虐待をなくすためにはハイリスク家庭の早期発見、訪問による対人援助が必須である一方、予防的施策は模索されている。本論では①複数専門家がレビューを繰り返して制作監修したテキストメッセージを②メール、LINE等のICTを活用した「伴走型情報発信」することが③不安軽減につながるかについての共同研究を報告する。
【方法】
①小児科医、プライマリケア医、産婦人科医等が約2年間レビューを繰り返し制作監修したテキストメッセージ(コンテンツ名「きずなメール」)を使用。ここに港区の行政情報を付加する形で、妊娠初期から3歳誕生日まで伴走型情報発信をした。
②「メール配信」を使用した。本研究は東京都港区の事業名「港区出産・子育て応援メール(産前/産後)」(以下「きずなメール事業」)に関わる共同研究として実施された。
③同区内における妊娠初期から3歳誕生日まで乳幼児の養育者を対象として、きずなメール事業の登録者1,709名(処置群)、住民基本台帳より層化二段無作為抽出により抽出した5,000世帯のうち、きずなメール事業非登録者(対照群)に対して、令和4年7~8月と令和5年1~2月の2回、子育てに関する不安感等を調査(パネル調査)。1回目と2回目の回答差を分析することにより、きずなメール事業の効果検証を試みた。
【結果】
対照群・処置群における1回目と2回目の差の差分析(DID分析)により、きずなメール事業の読者である処置群は、対照群に比べて「子育てに対する不安や悩み」が軽減されることが明らかとなった。
【考察】
複数専門家がレビューを繰り返したテキストメッセージによる伴走型情報発信が不安軽減につながることは、DX化の今、母子保健的にはハイリスクアプローチを補完する「ICTを活用したポピュレーションアプローチ」「テキストによる間接支援」としての可能性に直結する。なお本研究は、個人情報を含まないアンケート調査を元に報告するものである。

わたしたちは、引き続き関係自治体と協働し、子育て世代の抱える不安や悩みなどをやわらげる「併走型情報発信」に関する活動を、これからも続けてまいります。(了)


