40代からの「社会貢献したい」気持ち、なぜ高まる?~日本語ボランティアの経験から見えたこと~

A Volunteering brings joy and purpose to life after retirement, creating meaningful connections and experiences that enrich soul
こんにちは、きずなメール・プロジェクトの井上です。
私は昨年から、住んでいる地域で日本語ボランティアをしています。地域に暮らす、あるいは暮らし始めたばかりの外国の方たちが、安心して生活できるように、初級~中級の日本語指導用テキストを用いて、五十音順の発音やひらがなの書き方、実践的な会話表現を学ぶお手伝いをする活動です。
地域には、たくさんの外国の方が住んでいます。日本語がわかることは、日本で生活する上でとても大切です。買い物や病院、役所での手続きなど、毎日の暮らしの中で日本語がわからないと困ってしまう場面がたくさんあります。災害のような「もしも」の時も、日本語がわからないと大変です。私が関わっているのは主に大人の方たちで、皆さんが少しでも安心して暮らせるようになるお手伝いをしています。
この活動を始めたきっかけはいくつかありますが、ひとつは「きずなメール やさしい日本語版」を必要としている方たちと直接関わる機会を持ちたい、という思いでした。そしてもうひとつ、私自身が地域の方たちとのつながりをもっと持ちたいと思ったことも大きな理由です。
■「子どもの手が離れたらボランティアを」という声
先日、40代の友人と話していた時に、「子どもの手が離れたら、ボランティア活動をたくさんするつもりだよ」という話が出ました。彼女の周りにも学校や地域のボランティアに積極的な人が多いそうで、ごく自然な流れだと話していました。
日本語ボランティアの場でも、40代、50代、60代のボランティアさんがたくさんいます。元々小中高の先生という方や、外国の方たちと長年お仕事をしてきて引退後も外国語を活かしたい、という方もいます。「何か社会に恩返しがしたい」という気持ちで参加されている方も多いです。
■40代で高まる「社会貢献したい」気持ちのわけ
先日、ニュースで「ミッドライフ・クライシス」という特集を見ました。人生のちょうど真ん中あたり、40代で感じる、なんだかぼんやりした不安や迷いの時期のことだそうです。男女問わず40代から50代にかけて経験する可能性のある、人生の転換期における心理的な危機のことです。女性の場合、特に更年期障害による身体の変化や、子育ての終わり、キャリアの変化などが重なり、より複雑な状況になることがあります。男性の場合は40代から50代にかけての仕事やキャリア、体力、ホルモンの変化など、様々な要因が重なり、自己評価の低下や将来への不安、虚無感などを感じることがあると紹介されていました。
この「ミッドライフ・クライシス」という視点から見ると、私のような40代の女性がボランティア活動を通して社会貢献をしたいと思う背景には、いくつかの心の動きがあるようでした。
1)自分らしさの再発見と新しい役割
40代は子育てが落ち着いたり、仕事で任される業務内容が変わることで立ち止まったりと人生の変わり目にいることが多い時期です。これまでの役割だけでなく新しい自分らしさや「私がここにいる意味」を見つけたいという気持ちも強くなるそうです。ボランティア活動は、誰かの役に立つことで「私は社会に貢献できるんだ」「必要とされているんだ」と感じられて、前向きな自分になれる大切な機会になります。
2)さみしさや心のすきまを乗り越える
子どもの成長や仕事の変化などで、さみしさや心のすきまを感じやすいのがこの時期だそうです。ボランティア活動は、新しい目標や人とのつながりをもたらして、こうした心のすきまを埋める手助けになります。活動を通して毎日を充実させたり、明るい気持ちを育んだりすることで、内面のさみしさを乗り越えてホッと安心したり、満たされたりするのを感じられると言います。
3)感謝の気持ちを未来へつなぐ
人生の折り返し地点とも言える40代では、自分がどう育ってきたか、これまでの経験をあらためて見つめ直すことが増えます。その中で多くの人が家族、友だち、社会からのたくさんの恵みに気づきます。「これまでたくさんの人に支えられてきたな」「社会からたくさんのものをもらったな」という感謝の気持ちがわいてきて、今度は自分がその恵みを他の人や社会に返したい、恩返しがしたい、という強い気持ちにつながるそうです。
4)つながりと居場所の再構築
子育てや仕事で忙しかった時期に少し薄くなってしまった人間関係をもう一度作り直したい、あるいは新しい居場所を見つけたい、という気持ちが強くなるのも、この時期だそうです。ボランティア活動は同じ目標を持つ人たちと出会い、一緒に協力し合う場所を与えてくれます。これにより、居場所がある安心感や、仲間とのつながりが生まれて、心が安定したり満たされたりするのを感じられます。
このような色々な気持ちが重なり合って、40代の女性がミッドライフ・クライシスの中で、ボランティア活動を通して社会貢献や恩返しをしたい、という強い思いを抱くようになるのかもしれません。私自身を投影することで少しずつ見えてきたものがありました。(了)