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【読み物】コロナ禍で子育て世帯の孤立を防ぐ「情報的支援」とは

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、私たちの生活は大きな変化を強いられている。子育て中の家庭でもその影響は大きく、平常時とは異なるストレスを抱えている家庭が増えている。

2020年5月、就学前の子育て中の家庭に向けて行われたアンケート(※1)では、緊急事態宣言下において、7割を超える家庭で「子どもとの過ごし方に悩む」「親の心身の疲弊」といった困りごとがあったと回答している。その一方で、子育て支援機関等の利用を自粛しているという人は7割にものぼり、コロナ禍でストレスを抱えながらも、孤立している子育て世帯の姿が浮き彫りにされた。

子育て支援というと、育児の手伝いや金銭的支援といった「手段的支援」や、気持ちを傾聴し共感するという「感情的支援」などが考えられるが、コロナ禍において注目されているのが、孤立を防ぐために必要な情報を届けるという「情報的支援」である。今回は、子育て支援における「情報的支援」の重要性について、子育てにおけるサポートネットワークやソーシャルメディア利用などについて研究し、その中で実際に神奈川県藤沢市の子育て広場に通ってフィールドワークをした経験を持つ、昭和女子大学人間社会学部准教授の天笠邦一先生にお話を伺った。

【プロフィール】
天笠邦一(昭和女子大学 人間社会学部 准教授)

【取材・文】
西村陽子
(ライター・認定子育てアドバイザー子育て支援グループ「親まなび☆きらりん広場」代表)

■コロナ禍で孤立が深まる子育て中の世帯

――先生は、ご自身も子育てをされていて、去年育児休暇も取られたそうですね。コロナ禍で育児をされてどのようなことを感じられましたか?

「親が感染したら子どもの世話ができない」「子どもにうつったらどうしよう」といった恐怖心から、通常以上に慎重な子育てが求められました。本来ならば楽しいはずである子どもとのお出かけも、人混みを避けなければと思うと、出かける場所にも悩みます。「子育てひろば」なども覗いてみたいと思っていましたが、未だに参加できていない状況です。実際、私も精神的な息詰まりを感じていましたし、そういった状況で子育てをしている方がたくさんいるのだと容易に想像ができました。

――子育てに関して何らかの支援は受けられましたか?

人との接触を避けるため、基本育児は私と仕事をしている妻の二人で回していました。私も妻も実家が遠方で、両親も高齢であることを考えると、手伝いを頼むことはできませんでした。

――コロナ禍では必要な支援を受けられない世帯も多そうですね。子育て世帯の孤立を防ぐにはどのような支援が必要でしょうか?

支援には「手段的支援」「感情的支援」「情報的支援」の3つが必要です。物理的な手伝いなどの手段的支援は、コロナ禍ではかなり制限されていると思います。

一方で「話を聴く」「共感する」といった感情的支援は、対面での支援が難しい場合でも、LINEなどのビデオ通話などを利用することで、ある程度の支援が可能です。私自身も実家の両親とビデオ通話をしましたが、「おまえは大丈夫か?」と私自身のことを気にかけてもらえることで、かなり気持ちが楽になりました。

さらに必要となってくるのが、子育てに必要な情報を提供することで、子育てをサポートする「情報的支援」というものです。私はインターネットや子育てアプリなどを活用し、子育てに関する情報を得ていました。コロナ禍においては、非接触でも行える「情報的支援」の重要性が増していると思われます。

■子育てをサポートする情報は「弱いつながり」から

――今回は「情報的支援」について詳しくお話を聞きたいと思います。子育てにおける「情報的支援」とは具体的にどのようなものがあるでしょうか?

大きく分けて2種類あります。一つは、目の前の子どもに対して、自分がケアをするためにどういう方法が良いのかという、いわゆる「子育てのやり方に関する情報」の提供です。

もう一つは、「何らかの支援を得るために必要な情報」の提供です。子どもを預けたい場合や、子育てについて相談したい場合、どのような支援があり、どこに支援を頼めばよいのかといった情報です。そうした情報を普段から伝えておくと、いざ支援が必要となったときに、適切な支援にアクセスすることができます。

親御さんにとって、子育てにおいて自分で情報を得て選択し、それを実行するということは、「子どもに対して正しい選択をした」という、親としての自己効力感につながります。これは、情報的支援の一つのゴールだと言えるでしょう。

――子育てに関する情報は、家族や友人といった身近なところから、インターネットの中まで幅広く存在しています。情報的支援はどこから受けるというイメージでしょうか?

手段的支援や感情的支援は、家族や友人など関係性の強いつながりから受ける場合が多いかと思います。しかし、情報的支援に関しては、必ずしもそれが最善であるとは限らないのです。

アメリカの社会学者M.グラノヴェッタ-が提唱した社会ネットワーク理論に、「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」というものがあります。有益な情報は親や友人といった「強いつながり」からもたらされるのではなく、もう少し距離のある「弱いつながり(公的な支援機関や保育園、幼稚園の先生などの専門家も含む)」からもたらされるという意味です。情報的支援に関しては、「弱いつながり」からの情報が大切になってきます。

――一般的には、つながりは「強い」方が大切だと思われがちですが?

私たちが社会生活で構築しているネットワークには「強いつながり」と「弱いつながり」の両方があります。どちらが良いというわけではなく、それぞれに機能が違うのです。

強いつながりとは、お互い自己犠牲も厭わないようなつながりを指します。血縁関係や親友など、直接的に助け合い、協力を惜しまない関係です。日本ではそういった強いつながりに重きをおくところがありますが、強いつながりは、そのつながりを保つために異なる方向性のものを排除するという性質を持っています。その結果、外からの情報が入りにくく、情報が均一化され、情報の選択の幅が狭くなるのです。

一方、弱いつながりとは、適度な距離を持ちながらも、そのベースにはゆるやかな信頼関係があるというつながりです。例えば、保育園や幼稚園の先生とのつながり、公的な支援機関とのつながりなどがそうです。また、インターネットの記事に共感する、Twitterでフォローしている人から情報を得るといったつながりも、弱いつながりだと言えるでしょう。

そういう弱いつながりの中でもたらされる情報は、偏りが少なく情報量も多いため、色々な情報を比較検討することが可能です。つまり、弱いつながりからもたらされる情報のほうが、親御さんたちが自分で情報を取捨選択しやすい構造であると言えるのです。

――弱いつながりの中には、インターネットやソーシャルメディアなども入ると言うことですが、どのような特徴があるでしょうか?

育児書や雑誌などは、「これが正解である」と一定の答えや方法を示している場合が多く、お子さんに当てはまらない場合は、それが親御さんにとって不安やストレスになることがありました。一方、インターネットやソーシャルメディアは、同時にたくさんのやり方について情報を入手することが可能です。色々な情報を比較検討して、その中から自分の子どもに合うものを選ぶことができるのが利点だといえるでしょう。

――逆に、インターネットなどの欠点はどのようなことが考えられますか?

最近、問題となっているのが、「フィルターバブル」と呼ばれる現象です。フィルターバブルとは、個人がまるで「情報の泡(バブル)」に飲まれたような状態になり、偏った情報しか見えなくなる状態を指します。ソーシャルメディアなどがアルゴリズムやAIによって利用者の検索履歴などを分析し、利用者に最適化した情報ばかりを提供することで起こる現象です。

自分の思考や価値観に沿った情報ばかり見ていると、結果的に自分の価値観を疑うことが少なくなり、情報の過信や盲信などが起こってしまうのです。フィルターバブルに陥らないためには、その情報が正しいかを適度に疑い、色々な角度から情報を得るという柔軟な姿勢が必要になってきます。

■今後は「情報的支援」も子育て支援の一つの柱に

――新型コロナの影響で孤立する世帯が増えてくると、情報的支援の重要性が増してくるのではないでしょうか?

コロナ禍では、母親だけ、夫婦だけというように、子育てに関わる人が限られてしまいがちです。そのような環境の中、日々の子育てにおいて自分たちで考え判断するためには、偏りのない、良質な情報が必要となってきます。

また、本当に追い詰められて大変なときに、必要なところとつながれるための情報も重要です。支援が必要なとき、多くの場合自ら手を挙げないと支援にはたどりつけないのが現実です。困ったときに、どこに援助を頼めば良いかという情報を持っておくことは、孤立を防ぐために重要だと思います。

――お話を伺っていると、「情報的支援」は子育て支援の一つの柱として、整えていくべき課題だと感じます。

そうですね。子育て支援には、厳しい状態にある人達を引き上げる支援と、今ある子育ての質をさらに上げる支援の二つがあります。日本では、子育ての質を上げる支援は、あまり注目されていないように感じます。子育ての質を上げるためには、親御さんたちが「自分はちゃんと子育てができている」という自己効力感を持つことが大切です。そのためには、親御さんたちが日々の子育てを主体的に行っていくのをサポートする、適切な情報が必要となってきます。

――親御さんたちが自己効力感を持つということは、孤立や虐待などを防止するという意味でも大切ですよね。

親としての自己効力感が下向きになるというのは、子育てが厳しい状態へと落ち込む入り口だと思います。そこをどうやって食い止めるかを考えると、情報的支援の重要性が見えてくるかと思います。

――今後「情報的支援」を広めていくために、支援をする側にはどのようなことが必要となってくるでしょうか?

支援をする側は、情報を利用する人がその情報を元に自分でしっかり判断できるような環境を整えることが必要です。その上で信頼性の高い情報を、いかにたくさん提供できるかが重要になってくるでしょう。

また、情報を提供したサービスへの動線を、しっかり確保することも大切です。自分たちの持っている子育ての支援メニューを吟味して、どういった情報と一緒に提供すれば有効かを検証することで、効果的な情報的支援が可能になると思います。

――コロナの収束がなかなか見えない中、「情報的支援」が広く整備されていくことを願います。今日は大変興味深いお話をありがとうございました。

※1 新型コロナウイルスに係る就学前の子育て家庭への緊急アンケート調査
(特定非営利活動法人 全国認定こども園協会 新型コロナウイルス感染症対策プロジェクトチーム)

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