早く寝なさい!は権利侵害?弁護士に学ぶ「子どもの権利」勉強会/第29回編集会議開催報告
コンテンツグループの荻原です。
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2025年12月31日現在、6万2681人の読者の方とつながり続けています。
より長くつながり続けるために現在、18歳までの「学童期・思春期メッセージ」をブラッシュアップするための編集会議を、オンラインで月1回、開催しています。
第29回の1月13日は、弁護士の山下敏雅先生をお迎えして、子どもの権利に関する勉強会をしていただきました。
6名の医師と、8名のきずなメールスタッフが参加しました。

山下敏雅先生には、「子どもの権利が尊重される書き方になっているか?」という観点から「学童期・思春期メッセージ」の原稿を見ていただいておりました。(こちらのブログから詳細がご覧いただけます)
山下先生からいただいたフィードバックのコメントを通して、これまで気が付かなかった数々のことにハッとさせられ、ぜひ一度編集会議の場で子どもの権利についてお話をしていただきたいと考え、今回の会が実現いたしました。
【コンテンツ担当の思索録】山下敏雅弁護士に学ぶ「子どもの権利」勉強会

■山下先生からのレクチャーの概要
下記のようなトピックについてレクチャーをいただきました。
(団体内でまとめさせていただいたトピック名です)
・子どもの権利擁護委員としての活動
・山下先生が実際に出会った子どもたちの事例紹介
・事例の共通項は?「子どもの意見表明権」について
・子どものからの「なぜ?どうして?」法律やきまりは説明できるはずのもの
・保護の客体から権利の主体へ。「子どもの権利条約とは?」
・「子どもの権利条約」までの歴史
・乳幼児の意見表明とは?Viewsのこと
・「遊ぶ権利」と「育つ権利」はバッティングではなく両立
・「人権」てなんだろう
・子どもの幸せ、そして大人の幸せのこと
■特に印象に残ったエピソード
心に刻んでおきたいことが数多くあったのですが、その中で、学童期・思春期のお子さんを持つ親御さんのかかわり方という視点から、
「遊ぶ権利」と「育つ権利」はバッティングではなく両立
について取り上げたいと思います。
子どもの「意見表明権」の話をすると、「それでは子どもの意見を聞いたら、大人はその通りに従わないといけないんですか?」
という質問をよくいただく、というところから以下のお話をしてくださりました。
たとえば、夜12時を過ぎても寝ないでゲームで遊んでいたら、大人は「早く寝なさい」と言います。
これを子どもの権利条約から説明すると、31条に「遊ぶ権利」のことが書かれていて、確かに遊ぶ権利はあるけれども、「児童の最善の利益を考える」という原則もあり、6条「育つ権利」もあります。そして子どもは、夜寝ている時に体が育つわけです。
そうすると、
子どもの中で、権利がバッティングしている状態になる、と山下先生は言います。
“たしかに、「こうしたい、こうしたくないという子どもの意見」と、「大人が子どもの最善だと思って判断する意見」は、時に対立します。
でも、「寝ずにゲームをしたいという意見を受け止めること」と、「早く寝なさい」ということは、両立する話です。
「子どもの意見に従うかどうか」の前に「まずは意見を聞く」があることが大切です。話を聞いて、一緒に考えて、でもやっぱりそれは違うなという風になった時に、それは「早く寝ましょうね。」ということ。
子どもの最善の利益は、子どもの意見表明の先にある“
学童期・思春期メッセージの中にも、「『子どもの考えを尊重したい』と思う一方で、考えをすべて認めるのもどうかな…と葛藤する場面もあるかもしれません。」という出だしで始まる原稿がありますが、日々のコミュニケーションの仕方についてハッとさせられるお話だと感じました。
■医師からのコメント
山下先生のレクチャーを受けての、
監修チームの医師からのコメントもいくつかご紹介をいたします。
「納得しました。自分の中で人権を考えていると思っていても、侵害しているのではないか?と思った。子どもたちの権利を理解して尊重していける社会が必要。そういう社会で子どもが幸せであるためには大人たちも幸せでければならないのだと」
「10年以上前から性教育をしている。包括的性教育というものに変化していく中で、トップに人権の話が入る。自分自身も振り返りながら、話しにくさ感じている。勉強しながら伝えていかないと守れない世界もあるのだなと思った。子どもに対して話すのに、参考にさせていただく」
「小学校4年生に性教育をしている。15年ぐらい経った。今日お話を聞いて、自分が歩んできた道に応援の言葉をいただいた気持ち。私は子どもの自立性に力を入れている。自分の言葉で話せるようにと。子どもの幸せは大人が幸せにならなくてはという話があったが、私はお母さんと子どもは瞳を通して心の中を見つめ合っていると伝えている。お母さんが笑顔であれば子どもも喜びを、悲しければ子どもも悲しさを感じてしまう。今日の勉強会で、よい時間を得ることが出来た。また先生から伺ったことを通しながら活動に活かしていきたい」
「『保護の客体から権利の主体へ』という話が印象的だった。今年度からは5歳児健診が始まり、これまでと違う場面で子どもたちと接することが増えた。子どもたちと対面しながら5歳の子どもたちに権利の意識を持ってもらうか。まだ難しい年齢でもあるが、そこでの親子関係は将来へのひとつのサインかもしれないと感じる」
「以前、虐待対策チームに所属していた。虐待には連鎖がある。親を責めても仕方ない、親をどう守っていくかということが課題になっていた。また、心身症や不登校のお子さんを見ていると、親の顔色を見る子が多い。子どもには、1日1回、小さいことでも自分を褒めることが大切と伝えている」
■原稿に関する質疑応答
レクチャーの後、4件の原稿に関する質問をさせていただきました。
そのうち「ゲーム依存」に関わる原稿の検討についてご紹介をします。
ゲームにのめりこんでいるお子さんへの対応について原稿の中で、
“無理やり(ゲームを)取り上げるのは困難なことが多いです”
という書き方をしていました。
こちらに対して、山下先生より
「無理やり取り上げるのは、『困難』ではなく原則的に『すべきでない』ことです。もっとも、配信するメールで『すべきでない』とだけ言い切りで書くのも、説明不足のように感じます。」
といった趣旨のフィードバックをいただき、会の中でやりとりをさせていただきました。
山下先生からは以下のようなコメントをいただきました。
“たとえば、(包丁を持っているとか)緊急性があって無理やり取り上げることはあると思う。
でも、ゲームを強制的にとり上げることについて、子どもの人権や法律的な考え方で言うとそれは、「勝手に上の人が決めて、縛ってくる」という反発につながる。そっちの方がマイナスではないかと思う。きちんと話をすることはやはり大切。
また、専門家の助力もプラスではあると思うが、家族、親族、地域の中のいろんな大人、あるいは、かつて同じようにゲームにはまっていた当事者の先輩とか、そういういろんな人たちの声を聞きながら、親子が話し合っていくことが大事ではないかと、法律家としては思う。
それがうまくいかないにしても、そのプロセス自体がとても大事。ゲームをしなくなるという状態だけを優先してしまうことが、かえってお子さんや親子関係にとってマイナスになるのではないか”
医師からは、「専門家以外への相談がかえってマイナスに働いてしまう可能性」について話題に上がりました。
つい、「ゲームをやめさせること」にばかり目が行ってしまいますが、そこまでのプロセスはどうあるべきなのかということに考えを巡らせていく必要性を感じました。
今回の会を通して学んだことを活かしながら、よりよい原稿となるよう検討を進めていきたいと思います。
■担当者の一言
今回の勉強会に先立ち山下先生の著書を自宅で読んでいたところ、小学1年生の娘が「何を読んでいるの?」と聞いてきました。
なので、著書の中にもあり、子どもの権利擁護委員として山下先生も参加されている豊島区の、「豊島区子どもの権利に関する条例」の前文を、読み上げてみました。
すると娘は少し照れくさそうに私の腕に頭を押し付け、「もっと読んで」と笑顔で目を輝かせていました。
「子どもである自分が、大切にされていることがわかった」のか
「母親からこのような言葉を聞いたことが嬉しかった」のか
「勇気や希望のようなものが体の底から湧き上がってきた」のか…
あのきらめきを言葉でどのように表現したらいいのか、しばらく考えていたのですが、その答えは娘の中にあるのだと、勉強会を通して改めて感じました。
娘の心の内を想像するとともに、
「どうしてもっと読んでほしいと感じたの?どんなところが好きだった?」と聞いてみたい、と感じました。
「子どもたちの育ち」に貢献できる「学童期・思春期メッセージ」に向けて、これからも検討を続けてまいります(了)。

