メッセージ

※コンテンツ担当・松本の 「きずなメールができるまで」 もあわせてお読みください。

団体として

新しい命を授かること、新しい命が誕生すること――本来なら未来や希望を感じ、社会全体が喜びを持って迎えるはずのかけがえのないワンシーンに今、「乳幼児虐待」「産後うつ」「孤育て」(孤独な子育て)という悲しい問題が横たわっています。私たちはこの問題を、家族、地域社会、そして社会全体で意識を共有し、しくみを整えることで改善できる課題と捉え、その予防や解消のためにアクションを起こすことを使命とした団体です。

 

・虐待で命を落とす乳幼児で最も多いのは、生後わずか4か月までの赤ちゃんです。
・母親となった女性のうち、約1~2割が産後うつにかかり、そのピークは産後1週間~2ヵ月です。
・産後1年間で孤独や不安を感じている母親は約7割で、そのピークは産後4か月前後です。

 

上に掲げた3つの問題は、出産後から4ヵ月の間に集中しています。いずれも産後の早い時期にあらわれます。ならば、これらの問題を予防・解消するために重要な時期は、「出産直後の数ヶ月」なのでしょうか。いいえ、それは280日間ある「妊娠期間」が鍵を握ります。
ならば、これらの問題を予防・解決するためにケアすべき対象は、母親となる女性なのでしょうか。いいえ、母親を含め、父親となる男性、地域社会の意識が鍵を握ります。

 

モノも情報もあふれる現在。しかし、「泣きやまない赤ちゃんを傷つけてしまった」「子育ての悩みを打ち明ける相手もおらず、家でふさぎがちに…」という問題に対し、モノや情報はその予防や解消への大きな力には成り得ていません。逆に便利で快適な生活そのものが、思い通りにならないことが多い子育てへの耐性を失わせていたり、情報がありすぎるからこそ、何を信頼し、どの情報を選択すべきか、かえって混乱させている側面もあります。また、すでにある官民の支援策が親となった人たちに十分に届いていなかったり、こうした支援が必要である妊産婦さんのほうに、支援を受けることへのためらいがあったりもします。

 

では何が必要なのでしょう。私たちは、これらの課題に最も力を発揮するものは、妊娠期間中から地域と連携しながら継続して取り組む「きずなづくり」だと考えています。

 

妊娠期間から、母親・父親とお腹の赤ちゃんのきずなを強めること。
妊娠期間から、母親と父親の子育てパートナーとしてのきずなを強めること。
妊娠期間から、地域社会と親となる人のきずなを強めること。

 

私たちは、私たちが制作した<きずなメール>を通して、妊娠期間から地域のきずなづくりを支援していくことで、”孤育て””乳幼児虐待””産後うつ”という社会的課題の予防・解消、「だれもが誰もがかけがえのない思いで新しい命の誕生を迎え、子育てができる地域社会の実現」をめざします。

 

個人として

私と松本(元副代表・現コンテンツ担当)は、夫婦です。長女の妊娠時に『安心マタニティブック』の原書「The Pregnancy Journal」と出会い、長男出産翌年に、携帯メルマガを活用した妊産婦支援のアイデアが生まれました。「きずなメール・プロジェクト」は紛れもなく、“家族”から始まった物語です。

 

妻が「The Pregnancy Journal」と出会ったのは、長女を妊娠したとき、アメリカ在住の友人からプレゼントされたことがきっかけでした。妻は「お腹の赤ちゃんの成長を“1日単位”で紹介する」というコンセプトの本に感動しながら妊娠期間を過ごし、無事出産。産後、「この本をぜひ日本の妊婦さんにも届けたい」と出版社に企画を持ち込んで実現したものです。

 

私はというと、妻の妊娠がわかった途端、いつもの風景が違って見え始めました。妊婦さん、ベビーカー、ママチャリ、三輪車が町にこんなにも多いのかと。人間のセンサーは自分に関係ない情報は省略しますが、親になったことで、妊婦さんやベビーカーが突然「リアル」な情報に変化したのです。

親になる前の私は恥ずかしながら、「社会のために何かしたい」などと考える人間ではありませんでした。その私が、妻が妊娠した途端「子供の未来が少しでもいいものであってほしい。そのために何かできることはないだろうか」とさえ考え始めたから現金なものですが、親になることで初めて「社会」(地域)に出会ったともいえます。独りで生きているわけではない、と。

 

<きずなメール>は「お腹の赤ちゃんの成長をメールで毎日送ったら、妊婦さんに喜んでもらえるのでは」という素朴な思いつきが発端でしたが、その後私自身が別のマタニティ本の制作を通して、また2児の父として、妊娠・出産・産後の現場に様々な問題が起こっていることを知りました。

 

とりわけ乳幼児虐待は、ニュースに出会う度に胸がかきむしられます。虐待を受ける子どもの痛ましさはもとより、心ならずもそうしてしまう親の苛立ち、孤独、絶望。こういうことを少しでもなくせないだろうかと。

そんなとき私は、私たちの夫婦のアイデアに、問題解決に役立つ可能性があることに気づきました。「何かできること」は、自分の目の前にあったのです。

 

私自身が、こんなに便利でグローバル時代でも、子育てには多くの人の手や支えが必要で、地域とは切り離せないものだと実感しています。地域と関わって地域の人・関連機関のサポートをいかに活用できるかが、うつや孤育て、乳幼児虐待を減らす鍵になるではないでしょうか。きずなメールはただ読むだけでも役立つかもしれませんが、できることなら、地域からの「あなたは独りじゃない。ひとりで子育てしなくても大丈夫」という手を差し伸べる場であってほしいのです。メールの文字だけの情報が、実際に人が出あって直接寄り添う支援の活性化につながってほしい。

 

事業として考えるなら、今のような時代だからこそ「家族から始まる物語が事業として社会化する」というモデルを成功させたい。実現することで、同じような人々を勇気づけたいとも思います。 命や地域の「きずな」を支える仕事を通して、これに関わる人々もまた支えあい成長できる。<きずなメール>はそういう“場”であってほしいし、その力があるはずだ、というのが私の今の想いです。

 

(2011年5月6日に提出したSVP東京 応募表明フォームのテキストを一部改稿して掲載)

 

〈代表理事・大島由起雄〉


Profile

大島由起雄(おおしま・ゆきお)
多摩美術大学卒。KKベストセラーズにてエンターテイメント誌の副編集長を務めた後、WEBの企画制作会社を経て独立。「幸せのマタニティブック」(主婦と生活社)、「十月十日のマタニティ日めくり」(メディアファクトリー)の企画・編集なども手がける。

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