まつしま病院/小竹久美子助産師、古池織恵先生(心療内科)インタビュー(第2回)

02.09

お母さん向けポイント

  • 「産後うつ」はいまや10人に1人がなる可能性があるといわれている。
  • 自分が大変な状況になったら、ためらわず誰でもいいから相談する。「アウトプット」が大事。
  • 病院や保健師さんなど、地域の人やサービスは、意外に親身になってくれるもの。

パートナー向けポイント

  • 核家族で初めて子育てする女性は、人生で経験したことのない緊張状態で、「過緊張」になりやすいので注意。
  • まずは「言葉」で寄り添うことを意識して。その次に、育児を代わってみる。
  • 奥さんの「SOS」、「ちょっと普段と違う?」を見逃さないで。

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産前、産後の女性の「こころの問題」を考える。
まつしま病院/小竹久美子助産師、古池織恵先生(心療内科)インタビュー
(第2回/3回予定)
(第1回はこちら) 「母性神話」が母親を追い詰める
――経済の低迷や震災の影響もあって、産後の母親の環境は、以前にも増してストレスが高い状況にあるといわれています。 小竹助産師(以下「小」)  都市部で核家族、さらに初めての子どもの場合、とくに注意が必要です。1日中母と子だけで家にいて孤独な育児をしているということは、あまり理解されていないと思います。これはとても特殊な状況です。赤ちゃんが好きで助産師になって「絶対に1年は育休取る!」と言っていた人でさえも、子どもを産んだら「かわいいけど、ずっとふたりでいるのは…」と早めに職場に復帰する人もいます。乳児を抱えて働くのは大変ですが「体はキツイけど気持ちは楽」と。キャリアを積んできた女性はとりわけこの時期に、社会からの疎外感を感じやすいものです。 古池先生(以下「古」)  育休中や専業主婦で育児に集中できる時間があるのに、「働こうなんて考えるのはいけないんじゃないか」と考えてしまう人も多いです。「赤ちゃん産んで幸せ、赤ちゃんはかわいい、普通に育てて当たり前」という「母性神話」が、お母さんたちを苦しめています。

――赤ちゃんの体重計のレンタルが増えている、という話もあります。
小 数字に対して、ちょっと過剰な信頼性を持つお母さんが増えています。妊娠中の超音波の写真には推定体重も表示されますが、「何グラム大きくなった」とか、「妊娠中に歩くといい」とアドバイスすると「何歩ぐらいですか?」など。産後に赤ちゃんが泣いている時に「少しぐらい泣かせていても大丈夫よ」と声をかけると、「何分ぐらいですか?」。大事な赤ちゃんだから、きっちりしたいという気持ちはわかりますが、もう少しおおらかに構えていても大丈夫。数字に過敏になって苦しむのは、赤ちゃんにとってもいいことではないですから。 古 「きっちり赤ちゃんを育てたい」と頑張るお母さんは、真面目で責任感があることの裏がえしなので、上手くいかないと「自分が悪い、自分で何とかしなきゃ」と自分を責めてしまいがち。真面目で責任感が強い性格はうつになりやすい性格でもあるので、苦しそうならぜひ周りの人が早めに気付いて、サポートしてあげてほしい。 小 赤ちゃんのオムツがすこしでも濡れているとすぐに「替えなきゃ」というお母さんだと、一日中オムツとおっぱいに明け暮れることになってしまいます。ルーズすぎるのは考えものですが、周りの人から「濡れているけど大丈夫?」なんて指摘されるくらいの人のほうが、楽に子育てしているように見えます。人に助けを求められる人も、安心して見ていられます。例えば産後の入院中に、「昨日も授乳で寝てないので、赤ちゃんちょっと見ててもらっていいですか?」と自分から言えるくらいのお母さんは、退院後の育児でもわりとうまく乗り切っています。逆に「がんばらなくちゃ、赤ちゃんにとってお母さんは私だけだから」という人は、一歩間違うと自分を追い込んでしまうことになりかねないので心配です。 パートナーは、まず「寄り添って」
――パートナーの役割も重要ですね。 小 今は出産時の立会率も9割近くで、男の人たちも「出産や子育てを一緒にがんばろう」という気持ちはとてもあります。でも実際には、仕事で帰宅は深夜になるなど、気持ちはあっても現実がついてこない。お母さんの方も、土日はパートナーに子どもを見てもらって息抜きができればいいんですが、逆にお母さんがパートナーに「土日くらいは休ませないと」とがんばってしまうと、目に見えない疲れやストレスがたまってきます。 古 最近の「ふたりでがんばって育てよう」という風潮も、お母さんを追い込む面があります。子育ては1日や2日ですむものではないので、できるだけふたりで続けやすい、負担のない形がいい。疲れてくるとどうしても攻撃的になり、相手を思いやるゆとりもなくなる悪循環に陥りやすくなります。核家族の子育てには、こういう怖さもあります。子どもは教科書通りにはいかないし、ただ「可愛いだけ」ではすまないものですから。 小 男性の方がちょっと意識を変えることで、こんな悪循環を避けられる場合もあります。奥さんが疲れてイライラしている時、「なら僕がオムツ替えや抱っこをしよう」と考える男性は多くて、もちろんそれも大事ですが、女性の方はただ大変さを理解してねぎらいの言葉をかけてほしいだけだったりするんですね。「今日も大変だったでしょう? お疲れ様」と。それと「ただ愚痴を聞いてほしい」とか。「育児を代わってあげる」よりは「まず気持ちに寄り添う」感じでしょうか。ちょっとした言葉掛けでだけで、気持ちが救われるという女性は多いですよ。 古 赤ちゃんと1日中家で向き合って、二人っきりで不安でたまらないし、赤ちゃんに話しかけても返ってこない。だからご主人が帰ってきたら、他愛のないことでもとにかく人と話がしたい。女性の愚痴には、こういう意味もあります。そんな時に「君はいいね、家にいられて」とか「僕も会社で大変だったんだよ」なんて言われるとカチンときて、こういうところからストレスを貯めていくことになります。ささいなことですが、大事なポイントです。 ――いきつくところはパートナーの関係性ですね。 小 私たち助産師でさえ、赤ちゃんを密室で、一対一でずっと見ていれば、辛くなるかもしれません。「可愛い」のと「1日ずっと見ていられる」のは別ものです。とくに初子のお母さんは、「何かあったらどうしよう」「異変を発見できなかったらどうしよう」と、真面目な人ほど目が離せない。そういうお母さんは、ゆっくりお風呂に入る気持ちのゆとりもないし、意外にパートナーも知らないのが、「お昼ごはんは立って食べている」とか、そもそも「食べない」というお母さんが少なくないこと。 古 核家族で初子のお母さんは、人生で初めて体験する緊張状態、いわば「過緊張」になりやすい状態です。周りの人は「赤ちゃん生まれてよかったね」といい面ばかり見てしまうので、お母さんが過緊張になる可能性はどうしても見逃しやすい]] >

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